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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十九話 流れ出す前兆、軍靴の灯火
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もう間に合わない。既に俺は振り下ろすこの一撃を止めることなど出来ない。だから、

「マリィ―――ッ!!」

瞬間、絡みついた泥を払い落としたかのような感覚を感じた。マリィが咄嗟に俺の言葉を聞き入れたんだろう。断頭の刃はギリギリでマキナを避けきった。

『もう少しだったのに、何で外したの?』

「やっぱりアンタ達が仕組んでたってことなのか」

「あら、もうばれちゃったの?あと少しだったのに、残念ね」

そう言いながら俺の前に現れたのは先程から語りかけていた赤髪の少女にすら見える顔立ちをしているパシアスだった。

「貴様は……アルフレートの傀儡が今更何のようだ」

距離を置いたマキナが体勢を立て直しながらそう呟く。その言葉には怒りが立ち込めており、凡そ感情を顕にしないであろう彼にとっては驚くべきことだと感じる。

「その彼の最後の命なの。だから貴方には死んでもらわないといけなかったんだけどね。勘のいい彼は私に先導されていることに気付いたみたいだけどね」

「先導……だと?」

「正確には意図的に貴方の意識をずらしたというべきね。特に貴方みたいな人器融合型は直情的だからやり易いもの。優れた鑑定士は優れた贋作家になれる様に、本当の美食家は生き物のどの部分が美味しくて、どう調理すればいいのかを知っている。つまり他者を食す私は他者を調理することも出来るのという事よ」

意識をずらす、それはつまり奴は俺の意思すらも自由に出来るということだ。不味い、こいつは危険だ。そう奴を断とうと思い構えた瞬間、黒い戦奴はパシアスに殴りかかった。

「貴様の目的が何であろうと構いはせん。だが、俺とこいつの決闘を邪魔だてしようとした事だけは許さん」

「フフ、邪魔立てねぇ?私が介在したことで負けそうになったから文句でも言いたいって訳?」

しかし、マキナのその拳はパシアスに避けられ、その横の地面に打ち付けられる。

「違う。奴との勝敗そのものはここでは重要ではない。俺達の聖戦に貴様のような何一つ関係ない人間が紛れ込むことが、この戦いを侮辱することになるというだけだ」

そう言って再度振りかぶるマキナ。だが彼女はそれを先と同じように躱し、それどころか逆に影を解き放った。

「つーかまえた、っと。それにしても何一つ関係ないなんて大きくでたわね」

マキナは立ち止まり、いや立ち止まされていた。アレはおそらくルサルカの創造の一端なのだろう。影に捕まったものを動けなくする。それ自体は前に戦った時点で気付いてはいた。

「事実だ。貴様は俺達の蟲毒を知らん」

「まあ、確かにあなた達の城での殺し合いはしらないわ。でもあなた達の生きてきた世界はそれだけではないでしょう?」

問いかけるようにというより、試すかのように声を
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