第十九章
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ラインにして」
「ここのネットワーク環境は、とても危険な状況にあります。オフラインモードに切り替えますか」
「いや、オンラインの必要があるんだ。…この建物内部の、中央制御システムの位置を調べられるか」
数秒の沈黙の後、ハルが無表情に口を開いた。
「それには、ここのネットワーク環境に侵入する必要が生じます。再度申し上げますが、現在ここの環境は、とても危険な状況にあります。特にMOGMOGの侵入は、大変なシステム的リスクを伴います」
「そのMOGMOGっていうのは、かぼすも含まれるの?」
柚木が携帯を覗き込んで尋ねた。再び数秒の沈黙を経て、ハルが首を傾げた。
「分かりません。私に比べればリスクが少ないことは確かですが、確実な安全は保障できません。…通常の市販型MOGMOGならばビアンキは重要視しないでしょう。でも、かぼすはビアンキに面が割れています」
「…分かってる…」
柚木は少しの間、考え込むように顔を伏せていたが、やがて意を決して顔を上げた。
「ねぇ、もう一回だけお願い、かぼす。とても大事なお仕事なの」
画面の隅に、かぼすのふくふくした顔が現れた。そして相変わらず緊張感のない顔で、こくんと首を縦に振って笑った。
「いいよー、じゃ、あとはハルに頼むねー」
かぼすは、ハルに何かを確認するかのように顔を振り向けた。ハルもそれに応えるようにうなずき、再び口を開いた。
「かぼすの潜伏後、この端末をオフラインに設定します」
「えっ…それじゃ、かぼすが戻って来れないじゃない!」
「リスクを最小限に抑えるためです。定期的に一瞬だけオンラインに設定します。そしてかぼすの報告を待ち、可能であればかぼすを回収する予定です」
「可能で、あれば?」
「極めて危険な環境に潜伏するのです。戻ってきたかぼすは、何らかのウイルスに感染している可能性があります。かぼすが感染していた場合は、安全が確認できるまで、病院のネットワーク内に待機させます」
「……かぼす……」
「鈴花ちゃん、いってきまーす。ここは危ないからー、1階に戻って待ってて♪」
かぼすは再びのん気な笑顔を浮かべて、イルカのように画面から泳いで消えていった。柚木は、顔を伏せたまま僕の背中に額を押し当てた。
「……私さ、かぼすの事『便利なツール』って思ってた」
「うん…」
「でも違うね。…友達、だね」
紺野さんが、少し面映いような表情で柚木のうなじを見下ろしていた。
かぼすは考えていた。
制御システムの源流を追跡しながら、ぼんやりと思考を追っていた。MOGMOGとして「覚醒」したばかりのかぼすは、言語で思考をまとめることが出来ない。浮かんでくる思考や疑問は、0と1の配列に過ぎない。でも、確かに「考えて」いた。
1階で待ってて、と柚木に伝えた、本当の意味について
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