第十三話「夢」
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げた樹木の精霊が丸太のような腕を振り上げる。
固く目を瞑り身体を強張らせる少女に無慈悲にも腕が振り下ろされ、ズンッと重い衝撃と音が辺りに響いた。
しかし、襲い来る激痛がいつまで経っても来ない少女は思わず目を見開く。
「……え?」
間一髪のところで間に合った俺が少女の前に立っていた。その樹木の精霊の渾身の一撃を片手で止めて。
「ふっ」
俺は樹木の精霊の腕をそのまま捻り上げ、巨体を持ち上げる。自分と同い年くらいの少年が自身の身長を優に超す精霊を片手で軽々と持ち上げる光景に、少女は開いた口が塞がらなかった。
少年は持ち上げた精霊を投げ飛ばすと片手を翳す。
「凍結解放――〈炎槍〉」
少年の周りに炎で出来た無数の槍が虚空から現れた。翳した手を振り下ろすと射出された槍が精霊を貫く。樹木の精霊は咆哮を上げながら彼方へと、吹き飛ばされていった。
「安心しな、温度はたかだか五百度程度だ。樹木の精霊にしてみれば火の粉にも劣る炎だな。火傷すら負わんよ。驚きはしただろうが」
唖然としている少女に向き直った俺は手を差し出した。
「無事か?」
ハッと正気に戻った少女が慌てて手を取る。
「え、ええ……。大丈夫よ。助けてくれて感謝するわ」
「そうか。まあ怪我はないようでなによりだ」
取りあえず大事は無いようなのでほっと一息をついていると、少女がしきりに首を傾げているのに気が付いた。
「どうした?」
「あの、さっきのって精霊魔術よね……? なんで男のあなたが使えるの?」
「あ。あー……」
少女の疑問に俺は一瞬どう答えるべきか迷う。だが、すでに魔術は見られているため言い繕うことは難しいと判断した俺は素直に自分の正体を明かすことにした。
「口外しないでほしいんだが、実は俺、男の精霊使いなんだ」
「えっ? う、嘘……!」
突然のカミングアウトに驚愕で目を見開く少女。精霊と契約できるのは清らかな乙女だけというのが世間一般の常識である。歴史上で男の精霊使いが確認されたのはたったの一人。それも伝説の魔王とまで呼ばれた男のスライマンだけだ。それを考えると、少女の戸惑いも頷ける。
絶句している少女の姿を前に、髪をガリガリっと掻いた俺は重ねて頼み込む。
「疑問が尽きないのはよく分かる。分かるが、俺が男の精霊使いだということは秘密にしてくれないか?」
しばらく無言で何かを考えていた少女だったが、やがて顔を上げるとしっかちと頷いた。
「……わかったわ。誰にも言わないし、なにも聞かない。あなたは命の恩人だもの」
「
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