第十三話「夢」
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さないんだから、ね♪」
† † †
鬱蒼と茂る森の中を俺は上空をふよふよと漂いながらボーっと眼下を眺めていた。視線の先にはダークブラウンの短髪に一六〇センチ程の背丈の少年が大木に背を預けて足を投げ出して眠っている。
――ああ、これは夢か。
それを一目見た俺は、ここが夢の世界なのだと確信した。なにせ、大木の前で座り込んで静かな寝息を立てているのは、三年前の俺そのものなのだから。
ちょうど【精霊剣舞祭】に出場していた時期だ。かつての俺はカミトと戦いたいがためにフローレン・アズベルトという名前で出場していた。しかもカミトのような女装ではなく、変身魔術で完全に女性と成って。
――確か、この時期は決勝戦を一週間後に控えた日か。気分転換も兼ねて元素精霊界に来ていたんだったな。
当時の俺は気持ちよさそうに寝息を立てている。元素精霊界で眠るなど、普通なら正気の沙汰ではないだろう。なにせ野生の精霊たちがウヨウヨしている世界だ。眠っている最中に襲われたら一溜りも無い。
しかし、気配に敏感な俺は半径三キロ圏内の精霊たちの位置を眠っていても無意識の内に把握できる上に、自分に敵意を抱けばすぐに覚醒できる自信があった。
ふと、すやすや眠っていた俺の眉がピクッと動き、気だるげに瞼をこじ開ける。そして右手側の森の奥をジッと見つめた。
「――――」
森の奥から女の子の声が聞こえてきた。遠くにいるためかその声量は小さいが、焦燥感に駆られた者特有の緊張が孕んでいる。
立ち上がった俺はその場で大きく伸びをすると、次の瞬間には姿を掻き消した。
高速で森の中を移動しながら声のした方向を目指す。すると、視界の端に豪奢な儀礼装束を身に纏った女の子と樹木の精霊の姿が引っ掛かった。黒髪の女の子は精霊をキッと睨みつけている。
「お、お前なんて、わたしの騎士なら簡単にやっつけてくれるんだからっ」
背丈を優に超す精霊に震える声で気丈にも叫んだ少女は契約精霊を呼び出す召喚式を唱え始めた。
――汝、人の子の王に仕えし剣聖の騎士よ!
――旧き血の契約に従い、我を守る剣となりて我が下に馳せ参じ給え!
精霊刻印は少女の胸元に刻まれているのだろう。胸元から淡い光を放つが、
突然、少女と契約精霊との回路が遮断された。淡い光を放っていた刻印は急激にその輝きが失っていく。
「やっぱり、ダメなの……? 私は――」
少女の顔が絶望に染まり、諦観の念が表情に現れる。
憤怒の雄叫びを上
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