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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
10 「銀の太刀、群青の弓」
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ら「い、いや? それ、なに?」と首をかしげるリーゼに、エリザはくわっと目を見開いた。

「馬鹿ね! これ、あの“ファーレンフリード”よ!! 図なら見たことあるけど、本物なんて初めて! すごいわ! 主に使われてるのはベリオロスの、いや、これはベリオロス亜種の素材ね! 他には…ああこれはティガレックスの牙! 黒いから、これも亜種!? すごい!」

 兎に角「すごい」を連発しているエリザは、どうも最初の印象と違って見えた。なんだか好きなアイドルを生で見れてはしゃいでいる女子高生に見える。いや、その“アイドル”がこの場合狩猟弓になるのがちょっとズレているが。

「ふぁーれんふりーど…ああ、聞いたことあるような……ないような」
「アイスクレスト派生! あるいはサーブルアジャイルからの強化でも作れるわ! これが作れるハンターは上位だけよ! すごい! 溜めは何もしなくても貫通の性能もってるし、おまけに2,3秒溜められれば4本連射できるのよ! 何より……」

(え? )

 リーゼロッテは目を(しばたた)せた。この弓を使って4連射するには、2,3秒溜めるらしい。それは、つまり“溜め”の段階3か、あるいは4あたりじゃなかろうか。リーゼは弓を使わないから詳しくは分からないが、だがその溜め3や4を、先ほど彼がほんの数瞬でやってのけたことはわかった。ジャギィ達を仕留めたとき、あれは確かに4本の矢を連射していた。
 未だ何やら弓について熱く語っているエリザから顔を背け、ぼーっと進路を見つめるナギの横顔を見た。年齢はリーゼ達よりかいくらか上、だがまだおそらく20をひとつふたつ過ぎた程度だろう。ハンターとしては“若い”部類に入る。
 一般的にこの年齢層で言えば、HR(ハンターランク)は1か2が妥当な線だ。当然下位である。
 エリザの姉オディルや街から派遣されてきたユクモ村専属ハンターのカエンヌはそれぞれ年齢25、26のHR3だが、彼らも十分優秀と言えた。20代はHR1,2あたりにいるのが普通なのだ。HR3になれば一人前のベテランと呼べる厳しいハンター達の中、当然最も人数の多い層が下位で、その中で一部の優秀な人材のみが“上位”たるHR4以上となれる。上位になれば、いわゆる“称号”なんて代物もハンター協会から与えられるのだ。
 ハタチで上位なんて、天才以外の何者でもない。

(もしかして、もしかしなくとも、すごい人を連れてきちゃった……?)

 そんな人物に未だ香るペイントボールの罠を仕掛けてしまったこと、何も考えずに剥ぎ取る素材の量がどうのと怒ったことを、今更恐怖に感じられた。と同時に、それらに怒らず、寧ろリーゼ達のような新米ハンターに気を使ってくれたりした彼を、優しい人なのだと思った。

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