10 「銀の太刀、群青の弓」
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たという話も少なくない。
閑話休題。
(じゃあ、あの太刀は誰のだろう…)
一緒に住んで“いた”ハンターさんのものだろうか。その形見?
一般的に、ハンターは1人1種類の武器を極める。2つも3つも手を出して、全部器用貧乏になるという手はあまり好まないのだ。ゆえにあの太刀はナギのものではないと推測する。
ハンターとして死ぬとき、遺体が残るのは相当な幸運である。多くは装備ごと喰らいつくされ、跡形もなく消える。その際最も遺る可能性として高いのが、彼らの使っていた武器だ。力尽きた場所で拾われることも多く、それをハンター自身として埋葬するのがハンター達の供養の仕方であるとも言える。
(きっと、まだ埋葬できるほど心の整理がついてないんだ……)
亡くなったハンターの親族にも、たまにそういう者がいた。家の寝室にその武器を置いて、いつまでも帰らぬ人を待ち続ける者が。
(もしかして、それもあの人の対人恐怖症っていうのにつながっているのかもしれない…)
家を出てナギのあとについて渓流を下る。急な傾斜も慣れた調子で下っていくナギは、もたもたしているリーゼがちゃんと付いて来ているかどうか気にしながら進んでくれていた。ぬかるんだ道に足を取られそうになっても、パッと腕をとって転ばないように気を回してくれている。掴んだと思ったらすぐ手を離されてしまうが。
ふと気づけば覚えのある景色が広がっていた。
「見えたニャ。あの滝を降りればハンターたちの活動域に入るニャ」
ナギの頭に陣取っていたルイーズが、手を額にかざしながら言った。背中にはどこからか引っ張り出してきたどんぐりネコメイルの小樽を左右十字でかけている。今日出された食事をお持ち帰りする気満々だった。
(まるでイタリアンビュッフェでタッパーを準備するおばちゃんみたいな精神だよなぁ。ああ、コイツもちゃんとメスの要素もってるじゃないか。オバハンだけど。オヤジオヤジ言ってて悪かったな。オバハンだけど)
ナギが心中で謎の感心と皮肉と嘲笑を繰り返していると、ギロっと金の双眼がこちらをむいた。ピシリと背筋が凍る。
「旦那さん、今ニャにか嫌ニャこと考えたかニャ?」
「い、いや? 全然?」
今この瞬間、メラルーの眼力は上位リオレウスのそれを上回った。
「ちょ、ちょっと待ってください。この滝、飛び降りるんですか!?」
「ふニャ? 他にどこを降りるというのニャ? この程度の高さ、孤島の竜の巣から飛び降りるのに比べれば、鼻で茶が沸かせるニャ」
ふふんと鼻で笑いながら、腕を組んで自信満々なルイーズである、が。ため息をつきながらナギが訂正した。
「……『へそ』だ。あほう」
「にゃふっっ!? へ、へそで茶が沸かせる
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