暁 〜小説投稿サイト〜
Monster Hunter ―残影の竜騎士―
10 「銀の太刀、群青の弓」
[1/8]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「せめて、村に来るだけ来てください!」
「だから、いきニャりあんニャトラップを仕掛けてくるようニャ連中に、ついていける訳ニャいって言ってるニャ!」

 リーゼロッテを家に招いて小一時間。押しに弱いナギのことを知り尽くしているルイーズが、いつの間にか主人の代わりにリーゼと舌戦を繰り広げていた。
 舌戦といっても、単にルイーズがあの手この手で断る理由を持ってきては、リーゼは兎に角「村に来い」の一点張り。その繰り返しではあるが。
 気がつけば完全に蚊帳の外な当事者は、もう諦めたようにハナを愛でる作業に入っている。そうでもしないとストレスで胃がおかしくなりそうだった。ハナはナギに撫でくり撫でくりされて、先ほどまでおろおろしていたのだが遂に睡魔に負けたようだ。ナギの膝の上で気持ち良さそうに鼻提灯を膨らましている。

(2人共、よく厭きずに続けるよなぁ)

 むしろそれを聞いているナギの方が限界に近い。主に胃が。未だかつて彼の家がここまで騒いだことがあっただろうか。いや、無い。
 彼は静寂とまでは行かないが、五月蝿いのよりかは静かで穏やかな日常を愛していた。
 というより、ぶっちゃけ早く何時もの何でもない日々に戻りたかった。
 ゆえに、敢えてルイーズに言ったのだ。

「ルイーズ、もう良いんじゃないの」
「ダメニャ! 旦那は一度許しちゃうとそのままズルズルと相手のペースに持っていかれるタイプだニャ! 村まで行って感謝だけで終わる訳がニャいニャ。絶対ニャにか裏があるニャ! そもそも礼を言いたいニャら、村長がくればいいんじゃニャいか!」
「いえ、だから村長が村をそう簡単に出る訳には…。それに、おもてなしもしたいんですよ! お料理とか!」
「それ見ろニャ! どうせ食事に麻痺毒でも入れて旦那を捕らえる気ニャ。そうに違いニャいニャ!」
「やりません! 普通にお誘いするだけです!! って、あっ!」

 ルイーズがしめしめとほくそ笑んだ。まさしく悪者の顔である。

「ムフフ、本音を言ったニャ? それ見たことかニャ、旦那」
「なら、その誘いを断ればいいんだろう?」
「うニャッ? ま、まあ、そうだけど……」
「よし、じゃあ行くぞ」

 ハナをそっと下ろして立ち上がったナギを、ルイーズはムスッと、リーゼはきらきらと輝いた目で見つめた。正直なところ、そろそろリーゼも限界だったのだ。

「きっと断ってくださいニャ〜?」
「わかってる。じゃ、さっさと行こうか」

 一刻も早く愛しき平穏に帰るために、ナギはそそくさと旅支度を始めた。といっても、肩掛け鞄に棚から取った瓶を放り込んで、あとは扉の横の壁からつきでた杭に引っ掛けてあった弓を手にとっただけだが。その隣には何か細長い銀色の大きなものが立てかけてあった。見覚えのあるそのフォルム。

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ