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レンズ越しのセイレーン
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Report6-1 ヘルメス/バックステージ
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「軽い気持ちで誘って悪かったな。――やっぱり無理だったんだ。リーゼ・マクシア人とエレンピオス人が一緒に商売するなんて」

 ユルゲンスのその台詞が、発端だった。




「以上が当日の段取り。質問、ある?」

 司会のユティの締めの決まり文句に、誰もが首を横に振った。

「じゃあ各々準備にかかって。解散」

 今回の「企画」に参加するメンバーがぞろぞろとマンションフルーレ302号室から出て行った。残されたのはルドガーとユティだけになった。

 ルドガーはこっそり溜息をつきつつ今回の企画書を再び見下ろした。
 ワープロで打ち出していて文字は均一。特にフォントやレイアウトもいじっていない。彼女の平坦さを如実に表す文書である。

「やる気、なくした?」
「つい10分前にやるって答えたばっかだっつーの。そもそもコレ自体、俺がいないとできないだろ」

 この企画はルドガーの働きが成否の半分を握っている。やると口にした以上、リタイアはしない。ルドガー・ウィル・クルスニクの数少ない信条の一つだ。

「俺だけじゃない。エルも、ジュードも、エリーゼも、ローエンも、喜んでやる、つったろ。ちょっとは仲間を信じろよ」
「信じるだけで不安が消えるなら、古今東西、精神病なくなる」

 全員の了解を得ているのに、ユティの面持ちは暗い。何故なら――

「誰でもない、アルフレドのこと、なんだから」

 ユースティア・レイシィにとって特別仲のいい男、アルヴィンのための企画だからだ。

(そもそもユティのほうから俺たちに『お願い』なんてしてきたの自体、初めてだもんな。みんなに協力頼むまでに、会場の押さえと器具の確保は自力でやってあったし。この企画書も、文字こそ飾り気がないけど、内容は分刻みで細かいとこまで指定してある。これ全部が、アルヴィンのため)

 ユティはルドガーの正面のイスに座り、自作の企画書を読み返している。

「ユティってさ、アルヴィン関係は態度変わるよな」
「うん」
「ユティが一番一緒にいる相手が誰かっていうと、みんなアルヴィンって答えるし」
「うん」
「もしかしてアルヴィンが好きなのか?」

 ルドガーとしては思いつきを他意なく口にしただけだった。だが、ユティは目を見開いてルドガーを見返した。
 ユティが10秒経っても硬直したままなのを見て、ルドガーもさすがにまずいことを聞いたと気づいた。

「あー、いや、その、別にいいんだ。答えたくないならそれで。というか、ユティが誰を好きであっても俺がどうこう言えた義理はないし。アルヴィンって気が利くし空気読めるし、ユティが好きになっても納得できるよ。だから、ええと………………スイマセン、失言でした」

 ルドガーは素直にテーブルに手を突いて頭を下げ
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