第ニ話「勘違いのお年頃」
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。この一ヶ月で変わったなこの子。
「さて、取り合えずこれでいいか」
カタログのようなものが画面に表示され、服を選びボタンをプッシュ。現在、着用している服が光に包まれたと思うと次の瞬間には別の服装へと変化していた。流石は素粒子変換装置、いい仕事するなぁ。
選んだ服は二十代の若者が着るようなジャケットにスラックス。上下とも好きな色である黒で統一している。これでアクセサリーを付けたらどこぞのホストだな。顔だけは良いし、俺。主観的視点じゃなく客観的視点ねこれ。
「どうかな?」
ファッションモデルのような出で立ちをしてみる。顔を輝かせた反応だけで答えは十分だった。
「カッコいいです、マスター!」
「そ、そうか?」
そのキラキラ輝かせた視線が眩しい。
天宮の頃の俺は並みの容姿だったため、女の子に『格好いい』などの声を掛けられたことなんて一度もない。しかも中学、高校と男子校だったから女の子との接点はあまりなく彼女が出来た試しもない。
そんな俺が、生まれて初めて『格好いい』と言われた。
(やべっ、ちょっと楽しいかもこれ……)
モデルを勤める自意識過剰男たちの心情が少しだけ解ったかもしれない。完全な空回りの可能もなきにしもあらずだが。
「俺、ちょっと皆のところ行ってくるわ!」
「えっ? あの、マスター?」
玉座の間を離れて廊下を上機嫌で歩く。
「おっ、タナトス!」
丁度良いところにタナトスが。俺の姿を認めたタナトスはいつもの柔和な笑顔を浮かべた。
「あら、どうされました? なんだかご機嫌ですね」
「分かるか? 流石だな」
「ええ、それはもう。ご主人様ったら今にもスキップしそうな勢いですもの」
口元に手を当ててクスクスと笑う。こういう何気ない所作が淑女という感じで様になっている。
「ところで髪をお切りになったのですね。お召し物も変えて」
「ああ。人間たちでいうところのイメチェンというやつだ。どうかな?」
爪先から頭頂まで視線を這わせたタナトスはニコッと微笑んだ。
「よくお似合いですよ。キリッとして格好いいです」
「そうか? 嬉しいな〜!」
さらに気分がよくなった俺は大きく手を振ってから彼女と別れた。
「ふふっ、ご主人様も変わりましたね」
背後から微笑ましそうな目で見守るメイドさんには終始、気が付かない俺であった。
† † †
「
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