第壱話 Fourth Impact
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彼の右隣には、変わり果てた姿のカヲルがいた。
自分のつけていたチョーカーを代わりに引き受け、カヲルはそれを自ら起動させて果てた。
彼にはもう、生きる希望などなかった。
「こんなはずじゃ…なかったのに…」
彼の乗るエヴァンゲリオン第13号機は、ロンギヌスの槍を引き抜いたことによって『トリガー』となり、彼は人類を滅ぼす『悪魔』となりつつあった。
さっきからエヴァ八号機のパイロットがいろいろ言っているが、彼にはもうそんな事どうでもいい。
「後始末は済んだ! せめて姫を助けろ! 男だろ! わんこくん!」
──アスカを助けろ…?
シンジの脳裏に彼女の激怒した姿が浮かんだ。アクリルの分厚い板にひびを入れたあの時の形相。
──何を助ければいいんだよ…もう…誰も僕の事なんかわかってないじゃないか…ただ命令するだけで…
悲しみがだんだんと怒りに変わる。
──もうこんな世界…
「消えてしまえばいいんだ!!!」
エヴァンゲリオン第13号機が再びその体に光を纏う。眼光は赤く光り、9枚の翼を広げ八号機を払い落す。
「エヴァンゲリオン第13号機、再び動き出しました。強力なA.Tフィールドを展開中」
「A.T.フィールド!? あのエヴァには展開できないはずよ!」
ミサトはヴンダーの中から、エヴァンゲリオン第13号機を睨んだ。白く光り、両手に槍を持ち、他の物を全く寄せ付けないその姿は『神』そのものだった。
「何やってんだわんこ君!! 世界を滅ぼすなんてやめろ!」
払い落された八号機が再び飛びかかる。しかしその強力なA.T.フィールドに弾かれ、全く干渉できない。
「貫徹弾装填!! 何としてでも4thは止めなければ!!」
「了解!!」
ヴンダーが、残る全てのエネルギーを第13号機に叩きこむ。しかしその間にある壁に全て阻まれ、神殺しの船は全く役に立たなかった。
総員は、遂に立ちつくした。
「駄目です…A.T.フィールドが強すぎます…」オペレータの震えた声が、静まり返った操舵室に聞こえた。
もうミサトもなにも手が打てない。
「行きなさいシンジ君! 誰かの為じゃない、あなた自身の願いの為に!!」
第十の使徒戦、あの時彼にかけた言葉を思い出す。今現在の状況は自分にも責任がある、そう改めて感じると、彼女は小さくつぶやいた。
「行きなさいシンジ君…。誰かの為じゃない、あなた自身の願いの為に…」
シンジの目が緋色に染まる。そして…
4thは起きた。人類は滅した。
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