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ナブッコ
13部分:第三幕その三
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第三幕その三

「ではそれは何なのですか?」
「心だ」
 ナブッコは言った。
「御前には同じ父を持つ妹を思いやる心がないのか」
「では聞きましょう」
 アビガイッレは内心その言葉に反発を覚えた。だからこそナブッコにそのまま問うたのだ。
「貴女は私をどう思っているのかを」
「御前をか」
「そう。どうせ卑しい奴隷だと思っているのでしょう」
 言葉には自嘲の響きすらこもっていた。
「違うのですか?」
「馬鹿を言え」
 しかしナブッコはその言葉もアビガイッレの自嘲も否定した。
「そなたはわしの娘だ。フェネーナと同じだ」
「また戯言を」
 今のアビガイッレにその言葉を信じることはできなかった。
「そんなことを私が信じるとでも」
「では聞こう」
 ナブッコは言い返した。
「わしが今までそなたをむげに扱ったことがあるか」
 そう聞く。
「どうなのだ」
「ふん」
 この言葉に何故か不愉快なものを感じた。だがそれがどうしてかはわからなかった。
「これ以上何を話しても無駄ですね。それでは」
「フェネーナをどうするつもりだ?」
 ナブッコは今度はそれを問うた。
「言え。どうするのだ」
「決まっているではありませんか」
 アビガイッレの言葉は何故かここで揺らぎを見せてきていた。
「反逆者には死を」
「本気なのだな?」
「血を分けた者であっても国を脅かすとなれば」
 アビガイッレは王者の言葉を借りた。
「討ち滅ぼすまで。違いますか」
「御前にそれができるのか?」
「また馬鹿なことを仰る」
 しかし動揺はさらに大きくなった。
「どうやら王冠をなくされて老いを見せられているようですね」
「わしは老いてはおらぬ」
 それは真っ向から打ち消した。
「御前のことを知っているからこそ言うのだ」
「では私はフェネーナをどうすると」
「御前に妹は殺せない」
 ナブッコは今それをはっきりと言った。
「幼い頃から共にいた妹をな。殺せはしない」
「私は王です」
 ここで彼女は王という言葉を前に出してきた。
「王には鉄の意志こそが必要なのです」
「それを御前は持っているというのか」
「その通り」
 必死に動揺を隠していた。
「何を言われるやら」
「確かに御前はヘブライの者達は殺せるだろう」
 ナブッコはそれは認めた。
「だがフェネーナもそしてその側にいる者も殺せはしない。決してな」
「・・・・・・・・・」
 側にいる者を出されたところでアビガイッレは顔を青くさせた。さっと急に青くなったのである。
「御前は非情になりきれぬ。それは自分自身がもっともよくわかっている筈だ」
「幾ら言っても無駄です」
 アビガイッレは話を強引に打ち切ってきた。
「最早貴方と話すのは無駄ですね。それでは」
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