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フィデリオ
第二幕その二
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は何よりです」
 ロッコはそれを聞いて笑顔になった。だがそれは一瞬のことであった。
「用意はできたか」
 ピツァロがそこに姿を現わした。黒い服の上にマントを羽織っていた。
「所長」
「御前達の役目は終わった。去るがいい」
「わかりました。それでは」
 ロッコはそれに従いその場を後にした。フィデリオも連れていた。
「行くぞ」
「はい」
 彼もそれについて行った。こうしてその場はピツァロと囚人だけになった。
「久し振りだな、フロレスタン」
「その声は。そして私の名を知っているとはまさか」
「そう、そのまさかだ」
 ピツァロはニヤリと笑ってそれに答えた。
「御前に一度失脚させられたピツァロだ。だが今復讐の為にここにいるのだ」
「私は貴様の悪行を告発しただけだ」
 彼はそう反論した。よろめきながらも立ち上がる。
「罪もない人々を陥れ、その財産を巻き上げるなぞもっても他だ」
「他人のものを掠め取って何が悪い」
 彼はそううそぶいた。
「奪われる方が悪いのだ。それが摂理だ」
「それは悪魔の摂理だ」
 フロレスタンはまた反論した。

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