第二幕その一
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に向かう。するとそこに二つの影が映っていた。一人はその手につるはしを二つ持っていた。もう一人はスコップを二つ持っていた。
「そろそろだぞ」
「はい」
頑丈な鉄格子が見えてきた。そしてその奥に彼がいた。うずくまっていた。
「あれだ」
「死んでいるのですか?」
フィデリオはその囚人がうずくまり、動かないのを見てそう言った。だがロッコはそれには首を横に振った。
「いや、生きている」
「生きていますか」
「おそらく眠っているだけだ。死んではいない」
「そうですか」
彼はそれを聞いて安堵したような言葉を出した。そして囚人を見た。
「遂にここまで」
「時間がない。すぐにはじめるぞ」
ロッコはそう言って彼につるはしを一本手渡した。
「そこがいい。じゃやるか」
水溜りを指し示した。だがフィデリオはその言葉をよそに囚人の方を見ていた。
「おい」
「あ、はい」
声をかけられ我に返った。
「どうしたんだ、あまり時間はないのだぞ」
「すいません、誰なのか気になりまして」
「あの囚人が誰なのかはわし等には関係ないことだ。気持ちはわかるがな」
「はい」
(だが私にとっては違う)
心の中でそう呟いたがそれは口には出さなかった。
「もう少しで所長が来られる。それまでに掘っておかなくてはならないからな」
「かなりの深さですよね」
「まあな。人を埋めるのだからな」
ロッコはそれに答えた。
「かなり掘るぞ。急がなくてはならん」
「わかりました。それでは」
「うむ」
少し掘ると石が出て来た。
「これをどけてな」
「ええ」
石をどけた。
「さて、また掘るぞ」
「わかりました」
二人はつるはしで掘り続けた。ある程度掘ったところでロッコは言った。
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