第一幕その五
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とわしの仕事を手伝ってくれ。牢獄にも入っていい」
「本当ですか!?」
それを聞いて喜びの声をあげた。
「うむ。その奥にいる男だがな」
「はい」
話を聞くその顔が真剣なものになった。
「与えられる食事は次第に減らされている」
「そうなのですか」
「そしてな、殺されることになった」
「何と!」
さっきピツァロが話していたことだ。彼はそれを聞いて愕然とした。
「後一時間程もすればな。こっそりと殺されるのだ」
「死刑は朝の筈ですが」
この時代の欧州においても死刑は朝早く行われるのが普通であった。そういうしきたりとでも言おうか。ちなみにこの時代人の血は滋養の効果があると言われていた。その為フランスの貴族達は朝まで遊んだ後で処刑場に向かったりもしていた。そこで死刑囚の血を飲んでいたのである。着飾った、目の下にクマを作った紳士淑女達が先を争って美味そうに人の血を飲む姿はさながら吸血鬼のようだったという。
「予定は変わるものだ。急に変わったのだ」
「どうしてですか?」
「所長の御考えだ」
「そうですか」
それを聞いてやはり、と思った。
「だからですか」
(ではやはりピツァロ自身が)
彼は話をしながらそう考えていた。
(私は自分の愛する人の墓を掘らなければならないのか?何という恐ろしいことだ。それだけはさせない)
「だからあの男に食べ物をやるのは許されないのだ」
「わかりました」
「ではすぐに来てくれるな。そろそろ行くか」
「はい」
「墓掘りにはコツがあってな」
彼はそう言った。
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