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前略、空の上より
第一話「真心を込めた謝罪」
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我慢出来ない。


 その光景を目にして自制が聞かなくなった俺は拳を固く握りしめて飛び出した。


「この、バカチンがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」


「へっ? げふぉ!?」


 オレガノを組み敷いていた男を殴り飛ばす。間抜けな顔で腰を振っていた男は鼻血を吹き出しながら放物線を描いた。路上を二転三転と転がる。


「ピ、ピーター様!?」


「違う、アルカインだ! 放送を聞いていなかったのか貴様らは!」


 呆然と俺を見上げる男たちを蹴り飛ばす。


「な、なにを……」


「なにをだぁ? 貴様ら……エンジェロイドたちが逆らえないことをいいことに強姦に走るとは、男の風上にも置けない奴め……! 現行犯逮捕だバカ野郎!」


 俺は悪くないといった顔をして何故殴られたのか全く理解していない男たち。


 手を上げると、それを合図にどこからともなく現れた殲滅型エンジェロイド、タイプΣ【タナトス】が男たちの腕を掴み上げた。


 タナトスは一七〇センチの背丈でウェーブが掛かった腰まで届く黄金の髪に深紅の瞳をしている。メイド服で身を包み、その母性溢れる豊満な双丘がなだらかな曲線を描いている。


 常に笑顔を浮かべている彼女はおっとりした見た目とは裏腹に、このシナプスでも屈指の実力を誇るエンジェロイドだ。主に俺の警護を担当している、もう一人の護衛だ。陰ながら支えてくれている優しいお母さんである。


「は、離せ! 人形風情が主に逆らうか!」


「マスターのご迷惑ですので」


 腕を振りほどこうとする男たちだが、相手は殲滅を目的として作られたエンジェロイドだ。難なく抑え込むと柔和な笑みを浮かべた。


「ではご主人様、この方々を地下牢へ連れて行きます」


「ああ、頼んだ」


 タナトスに連行される男たちを見て深いため息を吐く。


「自分が空人だからって主発言か。どうしようもないな本当に」


 第一、タナトスの主は俺だ。インプリンティングも済ませてあるし。


 インプリンティングとはエンジェロイドへ施されるプログラムの一種で、彼女たちとの主従契約のようなものだ。エンジェロイドの首輪の鎖が伸び、マスターとなる者の手に巻きつくことで契約を成立させる。鎖は伸縮自在で可視化や不可視化が可能だ。現に今も彼女の首輪から透明の鎖が俺の右手に伸びている。


「はぁ、ああいった馬鹿が多いんだよな、ここは。嘆かわしいものだ」


 一昔前の俺(ピーター)も同類だったと思うと泣けてくる。





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