第一幕その二
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が貰える」
ロッコは誇らしげにそう述べた。
「世の中まずお金がないとな」
「それはそうだけれど」
「お金があればどんな苦しみも乗り越えられるだろう?懐にあの音がするだけでな」
「それはそうですけれどね」
「あらヤキーノ」
ヤキーノがここで帰って来た。
「食べ終わったんで戻ってきました」
「そうなの」
「おう、御前も聞け」
ロッコは彼に対しても声をかけた。
「御前も御金は好きだろう」
「そらやまあ」
「お金があれば力も湧いてくるし幸福も訪れるんだ。何もかもお金がんくては話にもならない」
「それでフィデリオさんのことを総督様にお願いするのね」
「そうだ。働きに見合ったお給料を渡してもらうようにな」
「有り難うございます」
フィデリオはそれに対して恭しく頭を垂れた。
「ですが私は看守長にも申し上げたいことがあります」
「何だい、それは」
「御金よりもさらに重要なものがあるのです」
「?何だ、それは」
ロッコはそれを聞いて首を傾げた。フィデリオはそんな彼に対して言った。
「信頼です」
「信頼」
「はい。何故私が御供をするのを認めて下さらないのですか」
「わしの仕事の補佐か」
「そうです。信頼して下さるのなら是非」
「気持ちは有り難いが」
「では何故」
どういうわけかロッコはここで言葉を濁したのであった。他の者にはそれが極めて不自然であった。
「お父さん、どうしてなの?」
マルツェリーナが父に問うた。
「フィデリオさんを御供にすればいいのに」
「そうだな」
彼は娘に対して応えた。
「そうすればわしの負担も減る。わしも歳だ」
「ええ」
黒いのはもう髭だけであった。それからもわかる。
「総督様もそれを認めて下さるだろう」
「では何故」
「一つ問題があるのは」
「それは何?」
「うむ、これは内緒だがな」
彼はここで三人を見回した。
「あまり大きな声で話すことじゃない。こっちへ来てくれ」
「ええ」
「わかりました」
彼等はそれを受けてロッコの側に集まった。ロッコはそれを見届けてから話をはじめた。
「この牢獄の奥にな、一人の囚人がいるのだ」
「奥に」
「そうだ。その囚人はどうもかなりの重罪人のようなのだ」
「何をしたのかしら」
「そこまではわからんが。そこに入ってもう二年になる」
「二年」
「そうだ」
声をあげたフィデリオに答えた。
「二年だ。かなり長いな」
「ええ」
(まさか)
フィデリオはそれを聞いて何やら思うところがあるようだ。しかし顔にも口にも出さない。
「それでその人は何処の人なの?」
「それはわからない」
娘に対してそう答える。
「何て名前ですか?」
「それもわからないのだ。一切不明だ」
ヤキーノにもそう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ