立志の章
第3話 「正直に言おう。手に負えん」
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「……」
「俺と一刀は、二人きりの兄弟だ。本当は血の繋がりがあるかどうかもわかっちゃいない。アーカムで検査を受けたときもその事はお互い知るつもりもなかった。血液型が同じだって事以外、どうでもよかったんだ」
「……」
桃香は、ただ黙って俺の話を聞いている。
俺はかまわず話し続けた。
「一年前にアーカムのA級チームまで上り詰めた俺達は、たまたまオリハルコンとの相性が良いとの判断で、スプリガン候補として様々な試験を受けることになった」
「すぷり、がん」
「スプリガン――超古代の遺跡から出る人知を越えた古代遺物……人が使うには早すぎる御業を封印する者。俺の着ているAMスーツも、その技術から造られている。見ただろう? あの炎の業を」
「……はい」
「あんな力が世界中に広がったら、人は、人類は、それを使って世界を滅ぼす。だから、それを人が理性をもって力を制御できる様になるまでは封印する、というアーカムの理念に俺達は賛同した。誰よりも人が殺し、殺され、死んでいく世界の中で育った俺達が」
「……」
「その時に誓ったんだ。俺と一刀は。『我らは同年同月同日に生まれ、同年同月同日に死せん』とね」
「!! 私たちと同じ……」
桃香が目を見開いた。
俺は少々苦笑しながら続きを話す。
「元は君達の故事に習ったのだが……まあ、そういうことさ。だけど、俺はあの時……一刀と一緒に死んでやれなかったんだ」
「え……?」
「俺たちの最終試験……とある好事家のコレクションにある、封印すべき古代遺物を回収する。簡単な仕事のはずだった。私邸を制圧して、封印するために古代遺物の……銅鏡を持ち出そうとしたときだった。一刀がナニかに喰われた」
「……!?」
「一刀の首から上が、銅鏡からできてきた黒い何かに、文字通り喰われたんだ。そしてその闇は……周囲を飲み込んで広がっていった。俺は回収を諦め、一刀の遺体を背負って森の中を走った……だけど、追いつかれた」
「………………」
「死んだ、と思った。その瞬間、闇の中にいて声が聞こえた。内容はよく覚えていない。ただ引き寄せる……とかなんとか言っていた。で、気づいたら君達が俺を見ていた」
「……一刀さんは」
桃香が一刀を見る。
信じられないのだろう。
俺から見ても今の一刀は、ただ眠っているようにしか見えない。
「首が喰われ、死んだはずだった。でも、今は首をあり、息もしている……奇跡だと思ったよ」
「……」
「君達には返しつくせぬ恩がある。この世界で右も左もわからない俺を救ってくれた。一刀を医者に見せるために労を惜しまず奔走してくれた。繰り返して言うが、本当に感謝している」
「……いえ」
「だが、それとは別に、俺は君の志にアーカムの理念と同じものを見た。俺達のような……戦場
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