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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
立志の章
第3話 「正直に言おう。手に負えん」
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ったはずだ。

「……その感謝、確かに受け取りました。お顔を上げてください、盾二さん」

 その声に顔を上げると、桃香は慈愛に満ちた顔で俺を見ている。

「盾二さん、私達……愛紗ちゃんや鈴々ちゃんと私は、世の中の人がみんな笑って暮らせるようにしたいんです。今の世の中は、賊に怯え、守ってくれるべき役人は搾取するばかり……こんな世の中、おかしいとおもうんです」
「……」
「私は、盧植先生の門下でしたけど、大した成績だったわけじゃないんです。だけど、盧植先生は、私の『今の世の中は確かにおかしい。けど、おかしいことをおかしいと声に出して言える貴方は、きっと大きなことができる』と、そう言ってくれました。それで私は決心したんです」
「……なにを、と聞いていいかい?」
「はい。誰も世の中を正してくれないなら……たとえ力も知恵もなくとも、世の中で一人でも笑える人を増やすために、私が世の中を変えたい、と」

 眩しい。
 雲の切れ間からこぼれた陽の光が、窓辺から桃香を照らし出す。

「その考えを、愛紗ちゃんと鈴々ちゃんだけが同意してくれました。そして、桃園で誓ったんです。『同年同月同日に生まれずとも、同年同月同日に死せんことを』、って」
「桃園の誓い……」
「はい、その時に私は言いました。『心を同じくして助け合い、皆で力無き人々を救う』と。けど、私にもわかっています。それは独りよがりでもあるんだって」
「……」
「私たちは偽善かもしれない。でも、やらない善に比べれば、やる偽善で皆が笑えるなら……それはきっとやるべきなんだと」
「……そのことを二人は知っているのかい?」
「いいえ、知りません。二人は心の底から私が善をやると信じています。でも、私は盧植先生のところでそれは『偽善である』とすでに言われていましたし」
「そっか……」
「最初は悩んだけど、それでもいいと思っています。理想は全てを救いたい……でも、できないなら少しでも多くの人を。そう思うんです。おこがましいかも、知れないけど」
「……」
「盾二さん、盾二さんは、私の偽善をどう思いますか?」

 桃香は、俺に問いかける。
 その目は、何を言われても受け入れる、そう言っているような気がした。

「……俺は生まれてすぐ、一刀と一緒に捨てられていたらしい」
「え?」
「最初の孤児院で三歳まで。その後、テロにまきこまれて保護された傭兵部隊で、十二歳まで戦場で過ごした。親代わりだった傭兵は言ったよ。『気紛れと偽善で拾って育ててやった』ってね。それでも感謝はしていたよ……」
「……」
「十二歳の頃、その傭兵部隊がほとんど全滅して親代わりだった傭兵も死んだ。俺と一刀も重傷を負って倒れていたところを、アーカムの人間に助けられた。それからようやく人並の生活と教育を受けた」

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