立志の章
第3話 「正直に言おう。手に負えん」
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愛紗の持つ青龍偃月刀は、どう見ても二十kgはあるだろう。
それをあの細い腕で自由自在に振り回している。
あの細身のどこに、あれだけの重量を振るう筋力があるというのだろうか?
そして鈴々の丈八蛇矛……丈八(四百七十七cm)もあるというが、確かに長い。
日本の戦国時代に、織田信長が足軽にもたせたという『三間槍』よりはちょっと短い。
だが、それでも長い。
長い、と言うことは、それが生む遠心力もハンパない、ということだ。
そしてそれを振るう腕力も。
「もしかして、桃香もあれぐらい強い?」
「ええ〜私、あんなに強くないよ。私も剣もっているけど……強さはからきしだし」
隣で一刀を膝枕している桃香は、ぶんぶん、と手を振っている。
……ふむ。
確か史実だと劉備は若い頃、暴れん坊だったという記述を見た気がしたんだが。
(そもそも史書とは、性別からして違うしな……)
深く悩んでも仕方ない。
そもそもスプリガンを目指した頃から『歴史』というものが酷くあいまいで、作られた存在であることも多かった。
『歴史』は所詮、文献などを参考に照し合わせた中で、最も信憑性が高いと言われたものに過ぎない。
そんなものはスプリガンを目指し、数多くの遺物に触れてきた俺にとって参考文献以上の価値は無かった。
「じゃあ、桃香って頭がいいの?」
「え、ええとぉ……い、一応、盧植先生の門下で勉強したけど……そんなに頭がいいって程じゃあない、かな。うん」
「……そっか」
盧植、ね……確か政治家で将軍で学者って人、だったかな?
あんまり覚えてないけど……確か無実の罪で投獄されたか、殺された人だっけ?
中国史、もうちょい勉強しておくんだったか。
一刀なら多少詳しかったかもしれん……。
「あ、あ〜今、何にも役に立たないな、この子、とか思ったでしょ!」
「いや、そんなこと欠片も思ってないけど……そうなのか?」
「う、う〜……ちゃんと役に立つもん……なにかに」
「そ、そうか」
あまり触れないほうがよさそうだ。
そうこうしている間に、愛紗と鈴々は残り三人まで賊を打ち倒していた。
愛紗たちの目の前にいるのは、チビ、ノッポ、デブの三人の賊。
頭には黄色い布を巻き、剣をぶるぶると振るわせながら腰が引けている。
「な、なんてヤロウどもだ……たった二人のくせに」
「ヤロウではない! 私たちは女だ!」
「そうだ、そうだ! どちらかというとメロウ(女郎)なのだ!」
「鈴々ちゃん! それ、意味違う! 全然違うから!」
メロウ……女郎は遊女のことだ。
隣の桃香が、若干顔を紅くしている。
鈴々のボケも、おびえきった賊相手では受けなかったらしい。
「くそ
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