立志の章
第3話 「正直に言おう。手に負えん」
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―― 関羽 side 幽州啄郡近郊 ――
盾二殿の妖術――といっていいのだろうか?
あの炎の業による轟音は、近隣の野盗共を引き寄せるには十分だった。
それは私も鈴々も、そして盾二殿自身にもわかっていた様子。
その証拠に盾二殿は、首をゴキゴキと鳴らせながら軽く準備運動をしているようだ。
「盾二殿、私と鈴々で蹴散らしますゆえ、桃香様をお守りしていただけますか?」
「えっ? うーん……でも俺が引き寄せたし、俺がやってもいいよ?」
盾二殿は、賊共を見回しながらそうおっしゃる。
数は……おおよそ三十、といったところだろうか?
「盾二殿。先程の気迫と御業を見れば、貴殿の腕が立つことは明白……なれど、ここは我らにお任せいただきたい」
「……そだね、一刀のこともあるし。任せていい?」
「お任せを。鈴々、いくぞ!」
「応、なのだ!」
鈴々と共に前へでる。
手に持つ得物は、愛刀である青龍偃月刀。
数はいようと、この程度の賊など我らの敵ではない。
「貴様らにくれてやるものなど、ここには塵一つない! 今すぐ立ち去るのであれば、命だけは助けてやるぞ!」
せめてもの情けに恫喝してみるが……聞くはずはあるまい。
「けっ……たかが女二人、相手にもなんねぇな。つまんねえこといってねぇで、さっさとその金塊よこしな!」
「愚か者どもが……」
当然の如く、賊が剣を抜きこちらに迫ってくる。
「シャアッ!」
「無駄なことを……フッ!」
無造作に刃を振るう賊がまだ振りかぶるうちに、私の刃が賊の首を刎ねる。
賊の身体は、振りかぶった体勢のまま数歩歩き――私の横で横倒しに倒れた。
「無駄だといったぞ?」
「テメェ……」
周囲の賊どもの殺気が満ちる。
ふっ……先程の盾二殿の気迫に比べれば、涼風にも等しい。
「鈴々、私は右だ」
「なら鈴々は左だなー」
「どっちが多く倒せるかな?」
「愛紗は今一人倒したけど、それは数に入れてもいいのだ」
「ぬかせ」
鈴々とじゃれあいながらも、お互いニヤリ、と笑う。
「テメエら、やっちまえ!」
「「「オオオオッ」」」
賊どもが叫びながら向かってくる。
「生きて帰れると思うなっ!」
「やっつけるのだーっ!」
負けるはずの無い戦いが始まった。
―― 盾二 side ――
「さすが……歴史に名を残すのは伊達じゃない、な」
三十人いた野盗も、三分と経たぬ間に半数に減っていた。
愛紗も鈴々も、歴史書に違わぬ強さを見せている。
「スピードは一刀並……力は俺と同じくらいか。AMスーツがなけりゃ勝てんな、こりゃ」
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