立志の章
第2話 「まさか……金(きん)か!?」
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ると、そこには黒い塊が溶岩のように赤く溶けていた。
「固まる前にやらなきゃまずい……ここにいてくれ」
盾二さんはそういうと、助走をつけて――
「「「ええええええええええっ!?」」」
信じられないことに空中を走り、途中で空に跳び上がった。
ううん、正しくは飛び跳ねたんだけど……少なくとも二十五丈(四十五m)近く飛び越したのである。
「……なんと」
「ほえええ……」
「人間じゃないのだ……」
私達は呆れたようにため息を漏らす。だけど、それだけじゃ終わらなかった。
盾二さんが懐から何かを取り出し――おそらくはさっきの賢者の石とかいう米粒だと思う。それを赤く溶けた鉄の中へ。
すると――
「「「ええっ!?」」」
その溶けた鉄が、見る見るうちに金色に――
「まさか……金か!?」
愛紗ちゃんが叫ぶ。
遠目から見るだけだけど……あれは周囲の火に照らされて見えるあの色は紛れも無く、金色。
盾二さんは、その塊がある程度固まるのを見計らって、川へ蹴り飛ばす。
その塊が水に沈むと、ジュウッ、と水が蒸発する音がして、しばらく蒸気が出ていた。
そして、冷えた頃合を見て水から揚げると――
「やっぱり、金……」
私が呟くと、ごくり、と誰かの唾を飲む音がした。
盾二さんは、先程と同じように助走をつけて跳びあがり、戻ってくる。
「……」
「……金だな」
「ふあ〜……金なのだ」
私たち三人は、盾二さんの手の中にある金の塊をじっと見る。
「……これでわかったかい? 何故、君達に誓いをお願いしたか……」
盾二さんの言葉に、はっとする私達。
そうだ。金が造れる――これはとんでもないことだ。誰かに知れればきっと命すら狙われる。
「……私達を、信用してくれたんだね」
「言っただろ? 『信義に応える』と……君達は俺や一刀に親身になってくれた。だからこそその信頼に応えるために秘密を見せた。それだけだよ」
そう言って微笑む顔に――私は胸が鳴る。
「……盾二さん。代わりにお願いがあるの」
「……なにかな?」
「私の真名『桃香』を受け取ってくれませんか?」
「桃香様!?」
愛紗ちゃんが声を荒げる。けど私はもう決めた。
たった一日。たった一日だけど、知り合った私たちにこれだけの信頼と信用をしてくれる相手に報いるのは……自分の真名しかないと思う。
「……大切なもの、だね。ありがとう。俺には渡すべき真名がないけど……いいかな?」
「うん、もちろんだよ! 私はあなたの秘密の代わりに真名を預けます。もしかしたらこれでも足りないかもだけど……」
「いや……十分だよ。君の気持ちは受け取った。これからよろしくね、『桃香』
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