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フィデリオ
第二幕その五
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正義のより阻まれる。そして正当な裁きが法廷において下される」
「万歳!万歳!」
 囚人達も看守達もそれを聞いて万歳を叫ぶ。彼を讃えているのだ。だが彼は自分が讃えられるのをよしとはしなかった。
「いや、待て」
「何故でしょうか」
「私は讃えられるべきではない。讃えられるのはそなた達に愛を下された陛下と神に対してだ」
「神に」
「そうだ。皆陛下と神を讃えよ」
「はっ」
「そしてこの高貴なる女性を」
 次にサオノーラを指し示した。
「身の危険を顧みず夫を救い出した彼女を。皆で讃えるのだ」
「フェルナンド」
「フロレスタン、私は君が羨ましい。天使に加護されているのだからな」
「そんな」
「皆天使を讃えよ!」
「はい!」
 皆それに頷いた。
「神は常に我等と共におられる!そして天使も!」
「レオノーラ」
 フロレスタンはその声の中妻に目をやった。
「あなた」
「今この声が聞こえるな」
「はい」
「皆が君を祝福してくれている。君を讃えているのだ」
「そう、貴女を」
 フェルナンドも言った。
「愛が貴女を導かれたのでしょう。真の愛は恐れを知らない」
「はい」
 レオノーレはそれに頷いた。
「私は恐れませんでした。愛の為に」
「そして私を救ってくれた」
「これを天使と言わずして何と言おうか。この様な妻を持つ我が友に祝福あれ!」
「フロレスタンに祝福あれ!」
 皆それに続いて叫んだ。
「夫の命を救った妻を讃えよ!そして彼女をもたらした神を讃えよ!」
「神よ、感謝します!」
「この様な天使を彼に与えた恩恵を、そして正義の力を!」
「あなたはまた私のものとなったのね」
「そう、永遠に君のものだ」
 フロレスタンとレオノーラは互いに抱き合った。
「もう離さないわ、永遠に!」
「最後の裁きのその日まで!」
「万歳!万歳!」
 暗い刑務所に歓喜の声が木霊した。その声は何時までもそこに鳴り響いていた。


フィデリオ   完


                2005・8・13

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