第四十話 同盟結成その十四
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「それでもね」
「そうした世界なんですね」
「そして政治の世界は極端だけれど」
「だけれど?」
「人間の世界。人間自体がね」
自分達も含めてだ。全てがだというのだ。
「表と裏があるものなんだよ」
「表と裏が」
「例えば俺達だけれど」
今度は警官の立場から話す高橋だった。
「警察官は正義を守る仕事だよね」
「そう思いますけれど」
「だからやりがいがあるし誇りのある仕事だけれど」
しかしそれでもだというのだ。
「刑事とか白バイ隊員の他には表だっては言えない仕事もあるんだ」
「警察でもですか」
「あるよ、実際にね」
そうだというのだ。
「そのうえで悪い奴等を懲らしめる仕事もね」
「あるんですか」
「政治は国家の利益の為、極論すれば国民の為にね」
「行うものだからですか」
「表も裏も。どちらも」
ひいてはだというのだ。
「国益。国民の為に行われているんだ」
「汚いことでもですか」
「勿論悪いことをする奴もいるけれどね」
具体的には汚職や国を貶める行為だ。そうしたことに専念する政治家や官僚がいるのも残念ながら事実である。
「けれどそれでもね」
「政治はですか」
「そう。国家と国民の為に行うものだから」
「表も裏も」
「両方で行うものなんだよ」
彼等が渦中にいる剣士同士の戦いにしてもそうだというのだ。
「そういうものなんだよ」
「ううん、そうなんですか」
「世の中ってのは完全に奇麗にはならないんだ。完全に汚くもならないけれど」
高橋は何処か遠い目になって現実を述べた。
「清濁なんだよ」
「清濁併せ呑むですね」
「器の大きい人がそう呼ばれて」
もっともこれは濁の側の言い訳に使われることもあったりする。人間は無意識のうちに清潔を、上城の様に求める人間が多いのでそうした人間の言い訳として使われることも多い言葉なのである。それがこの言葉だ。
「世の中自体もそうなんだよ」
「世の中ってそうなんですか」
「そう。世の中は広いんだよ」
「器としてですね」
「あまりにも広くて奇麗なだけじゃいられないんだよ」
高橋は今度は大人の顔で上城に話した。
「汚いものもその中に入るんだよ」
「何か。僕はどうしても」
今すぐに価値観は変わらない。それでだ。
上城は今は釈然としない顔になって高橋に述べた。その表情も彼は気付いていないが高校生の、まだ世の中を充分に知らないものだった。
その顔でだ。彼は言うのだった。
「奇麗なだけが」
「あっていいものだって思うよね」
「はい、本当に」
「俺もだよ。だから警官になったし」
「世の中が奇麗なだけであって欲しい」
「そう思ってだからね」
こう上城に話すのだった。
「警官になったんだ。けれど人間は不安定でね」
「
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