第二十二話 夏休みその十二
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五人は電車に乗りそれぞれの最寄の駅で別れた、そうしてだった。
美優は家に帰った、するとだった。
兄がいた、兄は丁度台所のテーブルに座って牛乳を飲んでいた。その兄が妹に対してこう言ったのである。
「塾どうだった?」
「ああ、よかったよ」
「あの塾いい塾だからな」
「兄貴あそこだったよな」
「中学までな」
鞄を部屋の端に置いて制服姿のまま冷蔵庫を開けて野菜ジュースを出す妹に対して答える。
「通ってたよ」
「高校は違ったよな」
「高校の時は塾に通ってなかったからな」
「夏とか冬もだよな」
「特にな。部活に専念してたな」
自分から妹に話す。
「だからな」
「兄貴高校時代は部活で青春してたからな」
「今もだよ。今はな」
「キャンバスライフにだよな」
「バイトな」
そちらに青春の情熱を向けているというのだ。
「そっちだよ、今は」
「工事現場だったか?今は」
「いや、今はスーパーだよ」
そこでアルバイトをしているというのだ。
「そこでレジやってるよ」
「そっちかよ」
「結構面白いぜレジもな」
「へえ、そうなんだな」
美優はテーブルの自分の席に野菜ジュースのパックとガラスのコップを置いて座りながら兄に応じた。そのうえで野菜ジュースを注ぐ。
赤にやや緑が入った濃いいささかどろりとしたジュースだ、コップの中のそれをまずは一口飲んでからまた言った。
「お金の勘定ばかりって思ってたけれどな」
「いや、色々な品物見てな」
カウンターにお客さんが持って来るそれの話だった。
「それがまたな」
「面白いのかよ」
「色々な人が色々なもの買うだろ」
「ああ」
「予想通りだったり意外だったりな」
そんな感じでだというのだ。
「いいんだよ」
「そうなんだな」
「後な」
さらに言う兄だった。
「日によってスーパーのポイントカードとかあるだろ」
「ああ、日によって五倍とかあるよな」
「あと安売りな」
スーパーの商法の定番である。
「その日は俺も買うんだよ」
「店員だけれどかよ」
「店員でも客なんだよ」
そうなるというのだ。
「だからいいんだよ」
「そうなるんだな」
「そうだよ、後な」
「後?」
「御前もバイトするだろ、大学に入ったら」
自分と同じ様にだというのだ。
「そうするだろ」
「どうだろうな、それは」
野菜ジュースを飲み終えもう一杯コップに注ぎながら牛乳を飲み続ける兄に返す。
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