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万華鏡
第二十二話 夏休みその十一

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「あの人なの」
「ああ、あの人ね」
「そう、それで話題になったらしいのよ」
「山口百恵さん主演って」
 琴乃もこのアイドルの名前は聞いて知っている、そして言うのだった。
「一度観てみたいわね」
「確かビデオにもなってるから」
 レンタルビデオショップで借りて観ることも出来るというのだ。
「観てみる?」
「本も読んでそのうえで」
「そうしてみようかしら」
「谷崎もいいし」
 そしてだった。
「後は泉鏡花とか」
「妖怪ものの人よね」
 今度は景子が言う。
「高野聖とか」
「そう、それもいいかも知れないわ」
 読書感想文としてである。
「泉鏡花の作品もね」
「というか一口に読書感想文っていっても多いわね、読めそうな本って」
 彩夏はこのことを実感した。
「思ったよりも」
「ええ、それでどうせ読むのなら」
「面白い本がいいわよね」
「私それでね」
 里香がここで言う作品はというと。
「夫婦善哉にしようって思ってるの」
「織田作之助だよな」
 美優がすぐに言って来た。
「大阪が舞台の」
「そう、大阪生まれで大阪に生きた人のね」
「その人の作品だよな」
「そうなの。それにしようって思ってるの」
「大阪なあ、そういえばあの作品のな」
 美優の方から里香に話す。
「名前ってあれだろ。実際にあったお店からだろ」
「今もあるわよ」
「あっ、今もか」
「あの作品に出て来る鰻丼のお店もカレーのお店もね」
「実際にあるんだな」
「今もあるわよ」
 どちらもだというのだ。
「大阪の難波にね」
「じゃあ今行って食うことも出来るんだな」
「そうなの」
「時間あったら行こうか」
 こうも言う美優だった。
「それなら」
「行く?それじゃあ」
 琴乃が美優の話に乗る。
「夏の間に」
「いいわね、大阪だと近いしね」
「難波まで直通だしね」
 彩夏と景子も話す。
「それならね」
「いいわよね」
「大阪は暑いけれど」 
 里香は夏の大阪のことも考えながら話す。
「いい町だから」
「ええ、行こう大阪もね」
 琴乃はその里香にも笑顔で言う。
「五人でね」
「幸い土曜休みだぜ」
 美優が言った。
「その日早速な」
「じゃあ土曜は大阪ね」
「ああ、行こうな」
 大阪に行く話も決まった、そしてだった。
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