第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
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える。
裸足の手足には、人のものとは明らかに違う肉食獣の如く鋭い爪が鈍く光っている。
「ぐーる? ぐーる……グールッ! まさかそれ――」
――ッアアアアアアアアアア――
ヒサウは何かを言おうとしたが、それが形になる前に、士郎たちに向かって異形の化物が襲いかかってきた。
十メートル以上の距離を一蹴りで潰した化物が、士郎に向けてその鈍く光る爪先を振るってくる。
「つっああッ!!」
――ギャオッ!!――
反射的で投影した干将莫耶を振るい、士郎は襲いかかってきた化物を四つに分割する。
断末魔の叫びを上げて転がる化物に顔を向けることなく、士郎は隣で呆然と立ち尽くすヒサウの手を取ると走り出す。
「し、士郎ッ?! グールってもしかしてっ!? っていうかその剣何処から出したっ?!」
「説明している時間がないっ! あれを相手に普通の武器では分が悪すぎる……ヒサウは逃げろっ!」
「逃げろって……お前はどうするんだ」
「アレを片付ける」
両手に持った剣を握りなおすと、士郎は燃え盛る家屋の影に向かって駆け出していった。
士郎の向かう先には、先程斬り殺した異形の化物の姿があった。それは一体だけではなく、次々に姿を現し。士郎が二体目に斬りかかった時には、ヒサウの視界の中に五体の異形の化物の姿があった。
「し……士郎」
ヒサウの視線の先には、肩を激しく上下させ呼吸をする士郎の姿があった。両手には黒と白の剣を握り、全身は赤く染まっている。士郎の全身を染める赤の元は、足元に転がる異形の人型。
口の中が粘着くのを感じながら無理矢理吐き出した言葉は、想像以上に小さく、燃え盛る炎の音に押し消されてしまう。
「……ヒサウ」
「なっ、何だっ!」
顔を俯かせ激しく呼吸をしていた士郎から唐突に声を掛けられたヒサウは、ビクリと身体を震わせ声を上げる。
「……足跡が東に向かっている。ここを襲った奴らは隣の村に向かっているようだ。俺は今からコイツらの後を追う。ヒサウは今来た道を引き返し――」
「オレも行くぞっ!」
士郎の言葉を遮るように、ヒサウが声を上げる。
「駄目だ」
しかし、士郎は淡々とした調子でそれを否定する。
「見ていて分かっただろ。コイツらに普通の銃は効果が薄い。ヒサウの今の手持ちの武器では時間稼ぎも出来ない」
「っ……」
士郎の言っていることは分かる。
あの化物との戦闘で、士郎は何時の間にか手にしていた双剣以外にも、拳銃や手榴弾での攻撃も行っていたが、それは目くらまし程度の効果しかなかったのを、ヒサウは見ていた。
そして今、ヒサウの手持ちの武器は、士郎が先程化物に使った武器と性能はほとんど変わらない。
だけど。
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