第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
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しかし、そのどれもがヒサウにとって初めてのことばかりだった。
そして……。
無茶な行動を取る士郎に怒ったり。
無様な姿を見せる士郎を笑ったり。
傷つき倒れる士郎を見て悲鳴を上げたり。
士郎に大切な女がいると聞いて悲しくなったり。
助けた少女にキスされて戸惑う士郎に……嫉妬したり。
どれもこれも、初めてだった。
初めて感じる感情だった。
自分にこんな感情があるなんて初めて知った。
自分がこんなに感情的に人と話すなんて知らなかった。
こんな気持ちになるなんて…………。
オレの何でもない話に笑う士郎を見て楽しくなった。
オレの無茶な注文に文句を言いながらも答えてくれる士郎を見て嬉しくなった。
私の身体に触れて赤くなる士郎を見てドキドキした。
私の知らない女の話をする士郎にイライラした。
士郎に触れられるだけで幸せになった。
……男を……人を好きになるなんて思わなかった。
短い士郎との旅でも分かることがある……自分の命よりも人を救うことを優先させる士郎は、誰かが見ておかなければならないと。
こんな自分の命を軽んじる男は、誰かが常に監視して、ストッパー役がいなければ直ぐに死んでしまう……と。
そうだ……こんな馬鹿な男には監視役が必要だ。
監視役……か。
まあ……監視役と言うよりも……味方か……な。
こんなイカレた馬鹿の味方をする奴なんかそうそういないだろうし、一人にしてたらあっと言う間に死にそうだし……。
なら、私は正義の味方の……味方……って言うことになるのか……?
始まりが唐突ならば、終わりもまた突然だった。
士郎との旅が一月が過ぎた頃。
私が正義の味方の味方になることを密かに決意した次の日のこと。
燃える村で、私と士郎の旅は終わった。
「何だ……これは……」
「賊の襲撃……ってわけじゃなさそうだね」
「ああ。これは……まさか……ッ」
呆然と燃える村を見ていた士郎だったが、不意に顔を上げると、燃え崩れる家屋の陰に顔を向けた。
ヒサウも同じように士郎が顔を向けた方向に顔を向けると、そこには異形の存在が。
「な、何だアレ?」
「食人鬼……か? ……いや……何だこれは」
士郎たちの前に立つそれは人の形をしていた。
頭と胴体、そして二本ずつ手足がある。
しかし、大きく開いた口の隙間から覗く鋭い歯は、燃え盛る炎に照らせれ粘ついた鈍い光を放ち。
焼け落ちたボロボロの服から覗く身体には、人の肌ではなく鱗のようなものが見
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