第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
[5/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
郎が話した内容を頭の中で反芻していると、意識せず言葉が漏れる。士郎はそれを聞くと、苦笑を浮かべた。
「まあ、それを目指しているからな」
「は? 今なんて?」
士郎が漏らした呟きを、聞き漏らすことがなかったヒサウは、小さくなりかけた焚き火にくべようとした姿のまま顔を上げた。
「正義の味方を目指しているって言ったんだ」
「ぶっ! あはははははははは……は、はは……。冗談じゃないようだな?」
真剣な顔で言う士郎に、ヒサウの笑いが段々と小さくなり、遂には尻すぼみに消えていった。下がっていた目尻が上がり。笑とは違う理由で細まる目が、鋭く士郎を貫く。
「……悪いか」
「いや……悪くはない……ふ……ん……『正義の味方』ねぇ……」
殺気が交じるほどの強い視線に曝されながらも、士郎の顔色は変わらない。ただ、少し先ほどと同じよにむくれ始めた士郎に、ヒサウの視線が弱まる。
「何だ?」
「いや……何も……」
表情は変わらないが、何か眩しいものを見るかのように、更に目を細めたヒサウに、士郎が訝しげな視線を向ける。それに気付いたヒサウが小さく首を振る。
パチパチと、薪が弾ける音だけが、二人のいる空間に響く。
何処か落ち着かな空気に、士郎が何かを言おうとするが、
「なあ、それ、オレが手伝ってやろうか?」
それよりも先に、ヒサウが口を開いた。
「え? 手伝うって、まさかマモルを探すのをか?」
「ああそうだ。言っておくが別に情にほだされたって理由(わけ)じゃないぞ。こっちにもこっちの理由があってね」
「しかし……」
「この国は長い間続く内戦で情勢がものすごく不安定だ。何も知らないあんたが、そんなとこで一人で何か出来るか?」
いきなりの提案に逡巡する士郎に、ヒサウが畳み掛けるように士郎の不利を説明を始めた。
「くっ……」
「で、どうする?」
自分の今の現状を知り、圧されるように黙り込む士郎を、ヒサウがにやにや笑いながら見下ろす。
にやにやと笑うヒサウを俯きながら見上げた士郎は、渋々と頷いて見せた。
「……お願いします」
「ふん……了解」
大きく足を組み、頭を下げる士郎の後頭部を見下ろしながら、ヒサウは大きく頷いて見せた。
「シ〜ロ〜ウ〜ッッ!! あんた何考えてんだッ!!?」
「すまんすまんっ!! まさかあんなもの持っているとは思わなかったんだっ!!」
「思わなかったじゃねえんだよっ!! どうすんだよアレッ!?」
ヒサウと士郎は爆撃で荒れ果てた街の中を全力で駆け抜けていた。
必死な顔で士郎を罵るヒサウは、背後から響く重低音を指差す。
「戦車が出てくるなんて思わないだろ普通ッ!!」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ