第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
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はぁ〜……。は、ははは、はぁ……初めてかもしれないな、こんなに笑ったのは……くくっ気に入った。なあおい、少し話でもしないか? もうそろそろ日が沈むし……そうだな、今晩、今みたいな面白いことを言ってくれればそれでいい」
「? そんなのでいいのか? まぁ……正直それは助かるんだが」
「こっちの懐は寂しくないんでね」
目尻に浮かんだ涙を細い指先で拭いながら、女が男に笑いかける。男はそんな女の様子に戸惑っていたが、ふっと息が漏れる様な笑みを浮かべると、女に手を差し出した。
「あん?」
差し出された手と男の顔を交互に見比べていると、男が自分の名を口にする。
「衛宮士郎だ」
「……ヒサウだ」
差し出された男の手を握り、女も自身の名を口にする。
「ヒサウ……久宇? 日本人か?」
「さあ?」
肩を竦めながら、ヒサウはフードを頭から外す。
フードの下から現れたのは、これから空を覆うだろう星空の様な輝きが混じる黒。乾いた砂混じりの風に煽られ、肩で短く切り揃えられた黒髪が揺れている。
細っそりとした顎先。
鋭い目尻。
日に照らされ浅黒く焼けた肌。
形のいい唇の端は、皮肉気に曲がっている。
一見可愛らしい十代半ばの少女に見えるが、黒い瞳の奥に輝く鈍い輝きから、見た目通りの年齢ではないことを確信させた。
ポカンと口を開いたまま呆然とする士郎に対し、ヒサウは可愛らしい顔立ちに似合うようで似合わないニヒルな笑みを口元に浮かべた。
「もしかしたらそうかもしれないな」
「へぇ。それであんたは、その『マモル』っていう子供を探してんのか」
「約束……だからな」
「ふ〜〜ん……で? そんなあんたが、何であんなとこで倒れてたんだ?」
内戦で人の姿が消えた村の中、比較的まともな家の中で、士郎とヒサウは火を挟み向かい合っていた。
士郎はヒサウに対し、あそこで倒れていた理由について説明していた。士郎の話を全て聞いたヒサウは、薄目を開けて上を見上げる。
「ん? あ、ああ。それなんだが、野盗に襲われている人がいてな、助けたはいいんだが、食料も水も全部取られたと言っていたから」
「……自分のをくれてやったと」
「……全部じゃないぞ」
「っぶ。くっくっ……それで自分が死にそうになるなんて、オレがいなけりゃ死んでたぜお前」
何処かバツが悪そうに、顔を背けながら呟く士郎に、吹き出す口元を抑えながらヒサウは笑う。
「分かっている」
そんなヒサウの様子に、士郎はむくれながらも睨み付ける。
「しかしまあ、何というか、馬鹿というか……自分を顧みらず人を助けるなんて……まるで正義の味方だな」
先程士
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