第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
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一緒にいられなくなる。
なのに……出来ない……。
だって……。
聞こえてしまった。
助けを求める声を……。
なら、助けに行かなければ。
何故なら……。
オレは…………。
私は………………。
「『正義の味方』の……味方……だから」
日が沈み始め。
世界が朱に染まる中。
赤く染まる空に黒煙が昇り……銃声が響き渡った。
衛宮士郎にとってヒサウは、近代兵器についての先生であり、辛い過去に負けず日々逞しく生きる強い女性であり、そして、とても弱い女の子だった。
近代兵器を忌避する魔術師だからというよりも、日本人であることから近代兵器の知識がなかった自分に、知識や技術を叩き込み。過酷と言う言葉では言い表せない程の過去を持ちながら、それを全く感じさせないサバサバした性格で『マモル』を探すのを手伝ってくれた。
強くて怖い女性だと思っていたら、食後のデザートで出した簡単なお菓子に子供の様な笑顔を見せたり、とある事情で一日離れただけで、酷く弱々しい少女のような姿を見せた時もあった。
たった一ヶ月の短い付き合いだが、士郎にとってヒサウは既に大切な女性になっていた。
だからもし、ヒサウが嫌でなければ、このまま一緒に旅を続けようかと考えていた。
しかし、それも……。
「ひ……さう?」
結局は、夢のようなものだった。
今……。
士郎の目の前に……。
赤く……。
紅く……。
緋く……。
朱く……染まったヒサウがいた。
ぐっしょりと重さを感じさせるほど、赤い液体で濡れそぼった服を身体に張り付け。
虚ろな目で虚空を見つめている。
捨てられた人形。
そんな姿だった。
右手は肘から先が千切れ。
左足は根元からその姿を消していた。
烏の濡れ羽色と言うに相応しい黒の髪は赤黒い血液と泥で汚れている。
ヨロヨロとフラつきながら、士郎がヒサウの下まで歩いていく。
パシャリと、士郎の足が赤黒い液体に浸る。
服が濡れることを欠片も厭うことなく膝をついた士郎は、怯えるようにヒサウの身体に触れると、ゆっくりとした動作で抱き上げた。
声が……聞こえる。
だれ……だろ?
……だれ……かな?
ああ……しろう……か……。
……また……ないてる……の?
もう……ほんと……なきむし……なんだ、から……。
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