第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
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。
だが、視線は倉庫ではなく、その周りに集まり、倉庫を破壊せんとする……化物に。
食人鬼がそこにいた。
数は一体。
倉庫の入口の前で、その猛獣の如き爪を倉庫に振り下ろしている。
岩で出来ている倉庫の入口も、巨大な一枚の岩で出来ているため、それなりに耐久度は高いのだろう。 食人鬼の攻撃に、倉庫は何とか耐えているが、それも時間の問題だろう。
何故食人鬼が倉庫を破壊しようとしているのかは分からないが、ヒサウはアレの意識が倉庫の破壊に向いている間に逃げようと背中を向け――。
――……ァ――
「――ッ!!?」
動きが止まる。
逃げようとしたヒサウの動きを止めたのは……泣き声。
凍りついたように動きを止めたヒサウの耳に、小さな泣き声が聞こえる。
一人ではない。
二人か三人か……複数の泣き声が聞こえる。
大人じゃない。
子供だ。
それも小さな……幼い……子供の。
……何故……動かない……。
どうして……逃げない……。
逃げないと殺される。
確実に死ぬ。
負ける可能性が高いとかの話じゃない……絶対に死ぬ。
アレとの戦闘能力の差はそれほどだ。
勝つとか負けるとかの話ではない。
捕食者と被捕食者。
さあ逃げろ。
今までそうしてきただろ。
やばくなれば逃げる。
命あっての物種。
さあ…………逃げろ、逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲ――
――タスケテ――
「何て……出来ないよな」
フッと小さく口元で笑うと、ヒサウはゆっくりと振り返る。
真っ直ぐに伸びる視線の先には、倉庫を破壊せんとする四体の化物。
手にする武器は、AKMが一丁に手榴弾が五個。後は拳銃が二丁にナイフが三本……。
死ぬな……。
あ〜あ……死にたく……ないなぁ……。
……死にたくないよ。
一ヶ月前なら……ここまで強く思うことはなかった。
一ヶ月前なら……こんなことで悩むことはなかった。
だけど今は違う。
震えるほど怖い。
泣き叫びたい。
逃げ出したい。
だって、知ってしまったから。
笑い合う楽しさを。
触れる暖かさを。
共にいる喜びを。
士郎とずっと一緒にいたい……離れたくない。
死んでしまったら……もう、
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