第2話 東の蛇神とギフトゲームをするそうですよ?
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このコミュニティの絶望的な状況を指し示すかのようで有った。
「ここの土地は、魔王に全ての生気を奪い尽くされたの。例え、ハクに水を呼ぶ能力が有ったとしても、ここに在った泉を復活させる事は無理」
淡い期待は、矢張り、元通りの結論に辿り着く美月。但し、この現状を変える為に、この目の前の少女を召喚したのも事実。
一気に状況を好転させられなくても、諦める必要はない。
そう。今まで示した能力からも判るように、この眼前の少女ハクには何らかの神性が宿っているのは間違いなさそうなのですから。
かつて水を湛えたで有ろう足元に一度瞳を落とし、水を湧き出させていた、と美月の説明した女神像に視線を移すハク。
そんな、僅かな隙間にも、西から吹き付けて来る魔風が運ぶ渇きと砂に因って、周囲の色が、先ほど因りも更に無味乾燥した物へと変えられて行く。
そして、次に彼女が美月に視線を戻した時には、既に自らの中にひとつの答えを見付け出して居る。そんな、感情の内を思わせる瞳をしていた。
そうして、
「私を、その水汲み場の川まで案内して貰えますか?」
……と、美月に問い掛けるハク。
瞳には、ある種の覚悟を。しかし、その花の容貌には、初めてこの世界に召喚された瞬間から変わらない、春の属性の表情を浮かべながら。
☆★☆★☆
砂と魔風に支配された村から徒歩で十五分から二十分程度歩いた先に有る水場。
いや、単なる水場と呼ぶには、その川に対して失礼で有ろうか。少なくとも、対岸が見えていない、……と言うのは言い過ぎか。しかし、対岸までの距離はどう軽く見積もっても数百メートル。足場として川……、いや、河にせり出した水組み用の木製の足場の下を流れる水は非常に緩やかで、まるで春の日の長閑な午後を演出しているかのようでも有った。
そう。ハクと美月の目の前で小さく波立つ水面を見せていたのは、日本に存在する川とは少し違う、明らかに大陸に存在する大河と言う雰囲気の河で有るのは間違いない存在で有った。
河を渡る適度な湿り気を帯びた風と語り、細やかな波の奏でる悠久の音を染み渡らせたハクが、微かに。しかし、小さく首肯いた。
そして……。
留まる事を知らない川の流れを見つめながら、一歩一歩、水汲み用の足場の先に歩みながら、祝詞を唱え始めるハク。
「神明に五色の幣を御奉り」
ゆっくりとした、その独特の歩み。古代の聖王の歩みを再現したと言われるその歩法が示すのは、聖。そして、生。
河に正対して右脚を前に。左脚を後ろに。
「五臓の神五方の神五行の神を奉り」
次に左脚を前にして、更に次に右脚を前にして、その後、左脚を右脚に従えて揃わせる。
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