反転した世界にて1
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
だけど、荒井くんは微笑んで手を振り返すだけで、その場から動こうとはしなかった。
「……あれ? 今日はいつもの男子たちと一緒に登校しないんだ?」
いつもだったらこの辺りで荒井くんとは別れて、一人で校舎にまで向かうことになるのだけど。
僕の質問に対して、荒井くんは逆に不思議そうな顔で首を傾げて、
「……なんだよいきなり。いつも一緒に登校する男子って、おまえだろ?」
「え……?」
当たり前のように言ってのける荒井くん。不覚にも、ちょっとだけときめいちゃったじゃないか。
流石はツンデレの素養を持つ男。侮れない。
実際のところ、たまに一緒に登校することはあったけれど、それでもいつもなんてことはないのだが。僕なんかの好感度を上げて何の意味があるのだろうか。
荒井くんの顔をじっと見つめる。
「荒井くん……」
「ん? ……どうしたよ」
(*´∀`)→(・∀・)
ときめいていた心が沈静化した。眼鏡レス+ツインテールな荒井くんのそれは、相当な破壊力を持ったブサイク顔だった。
「なにやってんだか。ほら、早くいこうぜ、予鈴鳴っちまう」
「うん」
駅から高校までの道のり。
その間、むすっと黙り込んでいるのも悪いと思ったので、適当に話しかけてみる。
「今日はメガネ、かけてないんだね?」
「あん? 俺、基本的にコンタクトだぜ。眼鏡なんて滅多にかけないよ」
「……そう」
『ていうか、学校で眼鏡かけてるところ見せたことあったっけ?』、と。これまた逆に訝しげな表情で問い返す荒井くん。
ほんの少しだけ、不機嫌そうな顔。『いつもかけてるじゃろがい、このメガネ魔人』などと言い返すこともできず、言葉を濁すことで事なきを得る。
なにが逆鱗に触れてしまったのかはわからないけれど。怖いので深く突っ込まない。
僕の悪い癖だとは自覚しているけど、場の空気を悪くするよりはましだと思う。どうせ空気なんて読めないんだったら、口数を減らす――ないし口を閉じておけばいいのだ。
僕なりの処世術。――処世できているかどうかは、甚だ疑問ではあるけれど。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ