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男女美醜の反転した世界にて
反転した世界にて1
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着込んでいた記憶があるのだけれど、今日は胸元を大きく広げて着崩して、随分と扇情的な格好をしていらっしゃる。
 それでも昨日の今日のこと、あれだけの美貌を見間違えようはずもなく。

「ふぅ……、フフ、……ハァ……ッ」

 窓ガラスにて尚も中継されている女性の表情は、昨日の見た怒り心頭といった面持ちとは違って。
 何かこう、余裕のない笑顔に、興奮と焦燥をごちゃ混ぜにしたような。客観的に見たらテンパりまくっているのに、自分では『私は冷静だ! 慌ててなどいない……ッ!!』と確信しているような、そんな顔してる。
 ――どういうことだろう。
 痴漢された腹いせに、される側の恐怖を世の男共に知らしめようと復讐心に燃えているのだろうか。
 恐ろしい。恐ろしいが、お姉さん、めっさ美人ですやん。
 ご褒美にしかなりませんて。
 ――などと言えるほど剛毅な男は、ぼっちなんてやっていないだろう。
 恐怖七割混乱二割、あとの一割はご想像にお任せする。

「ハァハァ……、――? あれ……」
「……?」 

 む? 美人の痴女お姉さんが何かぼそぼそ言ってるぞ?

「……うそ、やっぱりこの子、ノー……、……ないっ!」
「?」
「さ、誘ってるのね、誘ってるんでしょ!?」
「ひっ!?」

 先ほどまでは、もみもみさすさすだったのが、にぎにぎなでりなでりに変化した。往復速度と拘束力も二倍くらい。
 触れられている部分から妙な不快感と刺激を感じ始めたあたりで、ようやく僕は本能的に本格的に、身の危険を察知する。
 ――女の人の手が、ついに股間へと触れようとしたその時。
 火事場の馬鹿力が発動し、幸運の女神が僕に味方した。

「ひぃっ!!」
「きゃっ」

 全身をよじって女の人の腕を振りほどいた瞬間、まさにそのタイミングで、たまたま電車が停車して扉が開いたのだ。
 僕は韋駄天の如く、ホームから飛び出した。
 混み合う駅構内から改札までを、掻い潜るように走り抜けて、通学路までトップスピード。
 
 ――息が切れてきた頃合いに、恐る恐る後ろを振り向く。
 僕の珍行動を不思議そうな顔で眺めている人が何人か見受けられるものの、さっきの女性の姿は見つからなかった。

「――……はぁ〜っ」

 減速して、大きくため息をつく。今ばかりは、周りの視線も気にならない。変な脳内物質が分泌されているのかも。
 落ち着くと、身体ががくがくと震えていた。

「は、辱められてしまった……」

 まさか自分が痴漢(?)の被害者になってしまうなんて。
 でも僕、男なのに。
 心臓バクバク。汗だくだく。肩で息をしながら、僕はその場にへたり込んでしまいそうになるのを男の意地で我慢して、歩き出す。

「うう、トラウマだ。僕はもうお婿にいけな
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