反転した世界にて1
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自意識過剰かもしれないけれど、物凄く注目を浴びている気がする。自意識過剰であってほしいと思うんだけど。
時折聞こえてくるヒソヒソ声も、僕のことではないと願いたい。けれど、思い込もうとすれば思いこもうとするほど、都合の悪い方向にしか考えられない。
……こういう時は、現実逃避をしてしまおう。いつもみたいに素敵なお嫁さんとの新婚生活を妄想するんだ。まず、昔から女ながらにガキ大将だった幼馴染との婚約の約束を思い出すところから――。
「……ん?」
「――、はぁ」
妄想の世界へと没入しようとしたところ、
なんだろう、後ろの人が、やたら僕の尻を上下に擦ってくる。
荷物でも取り出そうとしているのか、モゾモゾと。
しかし生憎、僕も限界まで扉に体を押し付けているような状態だ。申し訳ないけれど、気の使いようがない。
「……はぁ、はぁ」
徐々に、上下運動がエスカレートしていく。
そんなに急かされても、これ以上は僕にはどうしようもないんです、ごめんなさい。
痺れを切らしたのか、後ろの女性は僕の両脇に手を通して、あろうことか抱きついてきたではないか。
ふにょふにょと、背中に柔らかな感触。――は、感じないぞ。仮に感じていたとしても、それはわざとじゃないし僕のせいでもないぞ。
……なにかおかしい。後ろの女性は、本当に下にある荷物を取ろうとしているのか? そして、さっきから執拗に胸筋を撫でられている気がするのだけど。
それにさっきから、首筋に生温かい吐息が吹き付けられているのだけど、これって……。
「……ふ、ふひ……、はぁ、ハァ……」
「!!」
え、痴漢? 僕痴漢されてるの!?
なんてこった。痴漢の加害者にだけはなりたくないと、常日頃電車に乗るたびに神様にはお祈りしていたけれど。
誰が加害者になりたくないからって、被害者になりたいとなんて考えるんだ! 今すぐ宗派を乗り換えてやる。
「――あわわ、あわわわ……」
恐ろしい。
後ろを振り返る余裕なんぞあるはずもない。とにかく電車が早く止まってくれることを祈る。
痴漢されるというのが、こんなにも怖くて声もあげられなくて、そしてひたすら情けなくなるものだとは、想像もできなかった。
――ジッと扉の窓ガラスを見つめていると、痴漢の顔がそこには映っていた。
「!?」
めがっさ美人だ!
あと、これって痴漢になるのかな? 女の人の痴漢って痴姦でいいのかな。痴女……とは言わないと思うけど、痴男に該当する言葉ってあるのかな。変態とか? しっくりこない。
などと冷静に考察している場合ではない。
……っていうかこの女の人、昨日の帰りに痴漢されたと騒いでいた女じゃないか。
昨日の彼女は、OL風のスーツをキッチリと
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