暁 〜小説投稿サイト〜
男女美醜の反転した世界にて
プロローグ
[3/9]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
るから離れろよな」
「おはよう。そういう荒井くんはなんだか機嫌悪そうだね。なにかあったの?」
「別に何がってわけじゃないんだけどよ。さっきまで乗ってた電車の女性専用車両、ガラガラだったじゃん」
「あぁ、同じ電車だったんだね」

 男子の名は荒井祐樹。離れろよなとか言いながら僕に構ってくれるあたり、ツンデレの素養を持った選ばれし男なのかもしれない。これっぽっちも嬉しくないなそれ。
 厚ぼったい眼鏡に、痩せ型の体躯。顔は、オブラートに包んでいえば普通。
 しかし、彼には隠された秘密があった。その牛乳瓶の底のようなけったいな眼鏡を外すと――、かなり不細工。顔面偏差値が10くらい下がる。
 顔面偏差値20(当社比)の僕がいうことではないけれど。

「おう。で、あれを見て思ったわけよ。世の中歪んでるっていうかさ。女をちやほやしすぎだってね」
「うーん、まあ、レディファーストなんて言葉があるくらいだしね」
「最近の女は、調子に乗りすぎなんだよ。あーあ、俺も女に生まれたかったなぁ」
「極論だなぁ」
「正確には、男の気持ちを持ったまま女として生まれ変わりたい」
「TSだ」
「おう。最近のトレンドだぜ。TSモノの面白いゲームがあるから、今度貸してやるよ」
「ありがとう」

 別にTSに興味があるわけではないけれど、荒井くんが選ぶゲームにははずれが少ない。
 ――とまあ、荒井くんと僕の関係は、友達同士というよりも同じ趣味を持つもの同士、たまに会話する程度、といった関係。
 僕はシナリオ重視だったりゲーム性重視で抜き要素があまりないモノばかりを買う。
 荒井くんは逆に抜き要素一本絞り。
 なので、よく交換してそれぞれのゲームについて語り合ったりする。
 ――しかし間違ってはいけない。僕と荒井くんは"同類"ではないのだ。僕と荒井くんには、選ぶゲームのジャンル以上に大きな差があって、

「おーい、祐樹」

 進行方向より斜め前。こちらの方――、正確には荒井くんに向かって、手を振っている男子のグループが一組。 

「――お、友達が読んでる。じゃ、俺、先行くわ」
「うん」

 彼は僕と違って社交的で、オタクながらに友達も多い。
 いつも行動を共にする仲良しグループみたいなもの(俗にいう親友?)をちゃんと持っている。
 わざわざみなまで言う必要はないだろうけれど、僕にはそういったものがない。部活に入っているわけでもなく、クラスでも浮いたコケのような存在。
 いわゆるところの"ぼっち"という奴で。
 思うところがないわけではないけれど、なんと言葉にすればいいのかわからず。
 電車の時とはまた違った意味で、やるせない気分になった。

 
 ◇


 ――教室前。
 そろりと、なるべく大きな音をたてないよう
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ