プロローグ
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るから離れろよな」
「おはよう。そういう荒井くんはなんだか機嫌悪そうだね。なにかあったの?」
「別に何がってわけじゃないんだけどよ。さっきまで乗ってた電車の女性専用車両、ガラガラだったじゃん」
「あぁ、同じ電車だったんだね」
男子の名は荒井祐樹。離れろよなとか言いながら僕に構ってくれるあたり、ツンデレの素養を持った選ばれし男なのかもしれない。これっぽっちも嬉しくないなそれ。
厚ぼったい眼鏡に、痩せ型の体躯。顔は、オブラートに包んでいえば普通。
しかし、彼には隠された秘密があった。その牛乳瓶の底のようなけったいな眼鏡を外すと――、かなり不細工。顔面偏差値が10くらい下がる。
顔面偏差値20(当社比)の僕がいうことではないけれど。
「おう。で、あれを見て思ったわけよ。世の中歪んでるっていうかさ。女をちやほやしすぎだってね」
「うーん、まあ、レディファーストなんて言葉があるくらいだしね」
「最近の女は、調子に乗りすぎなんだよ。あーあ、俺も女に生まれたかったなぁ」
「極論だなぁ」
「正確には、男の気持ちを持ったまま女として生まれ変わりたい」
「TSだ」
「おう。最近のトレンドだぜ。TSモノの面白いゲームがあるから、今度貸してやるよ」
「ありがとう」
別にTSに興味があるわけではないけれど、荒井くんが選ぶゲームにははずれが少ない。
――とまあ、荒井くんと僕の関係は、友達同士というよりも同じ趣味を持つもの同士、たまに会話する程度、といった関係。
僕はシナリオ重視だったりゲーム性重視で抜き要素があまりないモノばかりを買う。
荒井くんは逆に抜き要素一本絞り。
なので、よく交換してそれぞれのゲームについて語り合ったりする。
――しかし間違ってはいけない。僕と荒井くんは"同類"ではないのだ。僕と荒井くんには、選ぶゲームのジャンル以上に大きな差があって、
「おーい、祐樹」
進行方向より斜め前。こちらの方――、正確には荒井くんに向かって、手を振っている男子のグループが一組。
「――お、友達が読んでる。じゃ、俺、先行くわ」
「うん」
彼は僕と違って社交的で、オタクながらに友達も多い。
いつも行動を共にする仲良しグループみたいなもの(俗にいう親友?)をちゃんと持っている。
わざわざみなまで言う必要はないだろうけれど、僕にはそういったものがない。部活に入っているわけでもなく、クラスでも浮いたコケのような存在。
いわゆるところの"ぼっち"という奴で。
思うところがないわけではないけれど、なんと言葉にすればいいのかわからず。
電車の時とはまた違った意味で、やるせない気分になった。
◇
――教室前。
そろりと、なるべく大きな音をたてないよう
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