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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、離反する
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「……、終わった?」
目の前でコボルド王の身体がポリゴン片へと変わっていくのを見届けながら、僕はへなへなと尻餅をついて座り込んだ。
別に何かの意図があってそうしたわけではなく、安堵からくる脱力によって、だ。

「やったぁ!ユノくん、勝ったよー!やったやったー!」
「……あ、うん、そだね」
いつになくテンションの高いシェイリに対し、僕はいまいち乗り切れていない声を返す。
流れ的にはハグし合いながら「イヤッホオオオオゥ!」とか叫んでもよさそうな場面なんだけど、残念ながらそんな気力は残ってない。
正直言って緊張感が半端なかった。未だにナイフを持ったままの左手が震えてるくらいだ。
久しぶりのボス戦で、久しぶりの武器で、おまけにデスゲーム。
ほんの少しタイミングを間違えば、あの細身の刃───キリト曰く、カタナらしい───にばっさり斬られていてもおかしくなかったのだから。

「お疲れ様」
と、いまいち勝利の実感が湧かずにいる僕に、横合いから声がかけられた。
僕がそちらを見ると、そこにはいつの間に部隊に紛れ込んでいたのか、さっきキリトと共闘していた栗色ロングヘアの別嬪さんの姿が。

「えーっと……どちら様でしたっけ?キリトのお知り合い?」
「ちょっと、パーティメンバーの顔も忘れたの?」
「というと……アスナさん?まじでございますか?」
思わず変な口調で聞き返してしまった。
女性プレイヤーだということは名前と口調で分かっていたけれど、まさかこんなに美人さんだとは思わなかったよ……。
なるほど、今まで顔を隠してきたというのも頷ける。これ程の美人が一人でいれば、男性プレイヤーが嫌でも寄ってくるだろうし。
っていうか色白っ!睫毛長っ!羨ましくなるんですけど!

「そりゃ驚くよな。俺もさっきは驚いたよ」
「あ、キリト」
「お疲れ、ユノ。ナイスアシスト」
「……ん、ありがと」
「キリトくんもおつかれさま!」
キリトが手を差し出してきたので、僕も右手を持ち上げ、片手でハイタッチを交わす。
掌同士がぶつかるパチンという音を聞いて、ようやく勝利の実感が湧いてきた。

───本当に、誰も死なずに勝てたんだ、僕たちは。


「見事な連携だったぞ。そして最後の剣技も見事だった」
「エギルさん……」
「コングラッチュレーション、この勝利はあんた達のものだ」
そう言って、褐色肌のナイスガイは僕を助け起こしてくれた。
途中の「コングラッチュレーション」の発音が見事なところを見るに、もしかしたら本当に外国の人なのかもしれない。
そんなエギル率いるB隊のメンバーも、次々に祝福の言葉をかけてくれる。
そんな僕たちの様子を見ているうちに、呆然としていた周りのプレイヤー達も我に返り、静まり返っていた広間が歓声に包まれた。


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