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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、離反する
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ことじゃないか、まったく。
これでもし僕が本当のPKだったら、今ので殺されてても文句は言えないんだよ?

「それにしても心外だなぁ。ああ、まったくもって心外だよ」
言って、横目でキリトを見る。
僕の言っていることが信じられないといったように、呆然とした顔でこちらを見ていたキリト。そんな彼と目が合った。
ごめん、と心の中で謝る。
そして、彼に向かってナイフを投擲。

「ユノっ!?」
キンッ!という金属音と共に、投げたナイフが床に散らばった。
当然、パーティメンバーであるキリトに攻撃が当たることはない。キバオウの時と同様、障壁に遮られる。
それでも、パーティメンバーに攻撃を加えるという行為は、周りのプレイヤー達を驚愕させるのには十分だった。
十分に効果が出ているのを確認し、精々苛立ったような声を出す。

「同じ元βテスターってだけで、こんな奴と同類だと思われるなんて……ね」
「………」
「あの連中はβの頃、寄って集って群がってきたくせに、誰一人として僕を倒すこともできなかった雑魚プレイヤー共だ。レベル上げのやり方も───人の殺し方も知らない素人連中。それはこいつだって同じさ」
「おまえ……!」
僕の物言いに、シミター使いの男がまるで親の仇でも見るような目で睨みつけてきた。
それだけではなく、他のプレイヤー達からも敵意の視線が向けられているのをひしひしと感じる。
正直ちょっと……いやかなり怖いけれど、今更退くわけにはいかない。

「いいね、その目。βテスターの腑抜け共に比べたら、今の君たちのほうがよっぽどマシに見えるぜ?」
「………」
「こいつがボスのカタナスキルを知っていたのは、僕が事前に教えたからだ。こいつらがボスのLAを取る前に───僕の手で殺される前に、死んで貰っちゃ困るんでね」
キリトは何も言わない。何も言わずに、ただ寂しそうな目でこちらを見てくる。
だめだよ、キリト。ここは怒るところなんだから。
君は元βテスターだけど、僕みたいな《仲間殺し》とは違う。
君はそんなことを知りもせずに、パーティメンバーとして散々利用されていた。
だから、君は怒るべきなんだ。

「そういうことさ。元βテスターがどうとか下らないことを言ってる暇があるなら、自分たちの身を守る方法でも考えるんだね。でないと───」
言いながら、右手でメニューを操作する。
『パーティを解散しますか?』───『YES』を選択。
これで、僕はこの場にいる人間を攻撃することが───殺すことが、できる。

「───でないと、次は容赦しない。今回は大人しく退いてあげるけど、僕の邪魔をするなら───僕の前に立ち塞がるなら、相手が何人であろうと、誰であろうと……殺す」
殺す、という言葉を口に出した瞬間、自分の手が震えているのがわかった。
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