投刃と少女
とあるβテスター、離反する
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じゃあ行こうか、お嬢さん。しっかりエスコートさせて頂きますよ」
……うん、自分で言ってて恥ずかしさで死にたくなってきた。
緊張しすぎて頭がおかしくなってるのかもしれない。
「はーい!」
それでも彼女は、僕が差し出した手を握り返してくれた。
僕もそれをしっかりと握り返し……空いた手を、腰のナイフへと伸ばす。
「──っ!?」
全員の注目が集まる中、武器に手を伸ばした僕に対して、何人かが息を呑んだのがわかる。
それでいい。
僕を憎め。
僕を恐れろ。
僕を敵視しろ。
βテスターも新規プレイヤーも関係なく、《投刃》という、共通の敵のことだけを考えろ。
たけど、それら全てを踏まえた上で。
この子に手を出すことだけは、相手が誰であろうと許さない。
「───ごちゃごちゃうるさいなぁ、雑魚共が」
さあ、始めよう。
僕の───《投刃のユノ》の、一世一代の大舞台だ。
最低で最悪な……最高の悪役を、演じてやろうじゃないか。
────────────
「───ごちゃごちゃうるさいなぁ、雑魚共が」
なるべく低い声で吐き捨てつつ、腰からナイフを引き抜き、投擲。
適当に放り投げた四本のナイフは、喚いている集団に向かって一直線に飛び───あ、キバオウの顔に当たった。
「うぉっ!?」
レイドパーティのメンバー同士となっている僕の攻撃は、キバオウにダメージを与えることなくシステムの障壁に遮られた。
だけど、突然ナイフが飛来して……しかも目と鼻の先で甲高い金属音が鳴れば、誰だって驚くだろう。
実際、キバオウは飛んできたナイフに驚いて引っくり返り、尻餅をついていた。
別に彼を狙ったわけじゃないけれど、図らずしも今までの意趣返しができてちょっとスッキリしたのは否定しない。
「あーあ、そういえばパーティ組んでたんだっけ。うっかりしてたなぁ」
「なっ……なにすんのや!?」
「何って、決まってるじゃないか」
何を当たり前のことを、と言いたさげな声を作りながら、両手を広げてやれやれといったポーズを取る。
我ながら白々しい演技だと思うけれど、冷静さを欠いている彼らにはこのくらいが丁度いいだろう。
「僕は元オレンジ───人殺しのPKだ。君たちがそう言ったんだぜ?だからPKとして当たり前の行動を取っただけさ。ま、パーティ組んでるのを忘れてたのは失敗だったけどね。せっかく殺れるチャンスを逃がしちゃったよ」
「なっ……!?」
「別に驚くことじゃないだろ?僕が昔呼ばれてた《仲間殺し》ってのは、つまりそういうことなんだからさ」
目一杯の皮肉を込めながら、ニヤリと笑ってやる。散々騒いでいたC隊のメンバーが、一歩後ずさったのが見えた。
おいおいそんなに逃げるなよ。自分たちで言い出した
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