投刃と少女
とあるβテスター、離反する
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士の溝を広げないためには。元βテスター全員に対して、そんなイメージを持たせるわけにはいかない。
だから僕は、自分の過去が───《投刃のユノ》の名前が、彼らにバレていると知った時から、密かに考えていた。
元βテスターと、新規プレイヤーとの対立を防ぐためには。元オレンジである僕一人に、全プレイヤーの敵意を集めればいい、と。
放っておいてもいずれはバレていただろうし、何よりたった今、目の前のシミター使いがご丁寧にも暴露してくれた。
舞台の演出としては、この上なく整った環境だ。やるなら今しかないだろう。
「……、シェイリ」
「ふぇ?」
誰にも聞こえないよう、小声でシェイリの名前を呼ぶ。
状況が理解できているのかいないのか、ポカンとした顔で成り行きを見守っていた彼女を。
「僕は今から、最低なことをするよ」
「ユノくん……?」
ここで僕が、周りの敵意を集めれば。きっとその矛先は、ずっとパートナーを組んでいた彼女にも向かうだろう。
元オレンジの共犯者という汚名を、彼女に背負わせてしまうことになる。
そうなるのが怖くて。僕は心のどこかで彼女を守ることを諦めて、いずれ置き去りにしようとしていた。
……でも。
『ユノくんのばか!一人で死んじゃうなんて、絶対にゆるさないからっ!!』
僕のことを想って、あんなに泣いてくれたシェイリ。
そんなこの子に何も言わずに消えてしまうことは、彼女が寄せてくれる信頼への裏切りだ。
自分が元オレンジだとか、巻き込みたくないだとか、そんな独り善がりな言い訳はもういい。
決めたじゃないか。僕が《投刃》だろうと何だろうと、この子だけは守るって。
「この場にいる全員から嫌われるだろうし、下手をすれば命を狙われるかもしれない。僕と一緒にいることで、君にまで危害が及ぶかもしれない」
例え、僕が偽善者だろうと何だろうと。《仲間殺し》と呼ばれて、周りの敵意を集めたとしても。
僕を信じると言ってついてきてくれた、この子のことだけは。
この先何があろうと、守り通せばいい。
ただ一言、君が『信じる』と言ってくれたなら───
「それでも、君は……僕と一緒に来てくれる?」
「ユノくん、さっき約束したばっかりだよ?もうわすれちゃった?」
そうして、僕が問いかければ。
彼女はあの日と同じように、あっさりと答えを出した。
その顔に、いつものふにゃりとした笑顔を浮かべて。
「ユノくん、守るって言ってくれたもん。わたしは信じてるよ」
「……、ありがと」
ちょっと泣きそうになったけど、ここは我慢。
今から思い切って大芝居をしようという時に、主演の僕が涙目だったんじゃ格好がつかない。
目頭が熱くなってきたのを何とか押さえ込み、出来る限り気障な笑顔を作ってみる。
「それ
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