第百十九話 一枚岩その十一
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「政を第一にされているのですな」
「国は手に入れただけではなりませぬ」
「治めてこそですな」
「他家でも力のある家は皆そうです」
それは織田家に止まらないというのだ。
「武田、毛利、北条、上杉、伊達もまた」
「治めることに力を入れているというのですね」
「そうです。そしてその他の家と比しましても」
織田家はどうかというのだ。
「当家は尚更力を入れています」
「ですな、確かに」
「ですからこの都もです」
「こうして治め」
「はい、泰平の姿に戻ろうとしています」
「有り難いことです。見れば民達の顔も明るいですな」
働いている者達もそれを見ている者達もだ、誰の顔も明るい。
笑顔で遊んでさえいる、その彼等も見ての言葉だ。
「実に」
「この前までは全く違いました」
「噂にある通りでしたな」
「それは」
「はい、実に酷いものでした」
戦乱の傷跡がそのまま残っていて荒れ果ててしまっていた、それが都であり人の数も減っていたのだ。だが今はというと。
「こうまで。瞬く間になりましたから」
「全ては殿ですな」
明智が谷に応える。
「そうなるのですね」
「信長様が天下を治められてからですな」
「そうです。それからです」
まさにそれからだった。信長が今都を治めているからここまでなったのだ。
人も増えている、谷はその人の行き来も見ていた。
「多いですな、ただ」
「何か」
「いえ、どうも僧の中に延暦寺の者達もいますが」
「いますな」
明智も彼等に気付いた。
「自分達で言ってはいませんが」
「はい、いますな」
「延暦寺は都から少し離れた場所にあります」
行けない距離ではないのだ、それで僧兵達も都まで来てそれで強訴したりしていたのである、平安の頃からそうしている。
それで今もなのだ。
「僧兵達ではありませんが」
「僧兵達は最近大人しい」
ここで信行が言ってきた、彼もここにいるのだ。
「有り難いことにな。しかしじゃ」
「油断は出来ませんか」
「あの者達は」
「うむ、何かあればまた出て来る」
そのことを既に頭に入れている信行だった。
「気をつけねばな。それに三好が攻めて来た時のあの僧兵達も」
「闇の色の僧衣を着ていたのですね」
「うむ」
信行は明智に対して答える。
「それを着て三好に組みしていた。しかしじゃ」
「三好家の者達は知らぬと言っているのですね」
三好家の家臣達も多く織田家に入っている、三人衆は出家しているが他の家臣達は殆どそのまま入っているのだ。
その彼等が言うのだ。
「うむ、そんな僧兵達は知らぬとな」
「どの寺かも知らぬとか」
「三好は三好だけで攻めてきたのじゃ」
どの寺とも謀っていなかったのだ。
「寺のことは全く考えておらんか
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