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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一〜四章
四章 モンバーバラの兄弟
4-01美貌の兄弟

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 歌と踊りの町、モンバーバラ。
 その中心となる劇場の舞台では、青銅(ブロンズ)の肌、紫水晶(アメジスト)の髪と瞳の、美貌(びぼう)の踊り手が、多数の踊り()を従えて、(つるぎ)の舞を踊り、短剣を投擲(とうてき)する。

「きゃー!マーニャ様ー!」
「マーニャ様、素敵ー!」
「こっち向いてー!」

 美貌の男性、マーニャを追いかける女性に、色っぽい踊り娘たちが目当ての男性。優れた(わざ)()かれる者。
 今夜も、劇場は超満員であった。


 楽屋に戻ったマーニャを、よく似た美貌の持ち主、ただし太陽のような明るさを持つマーニャに対して、月のような静けさを持つ、弟の占い師ミネアが出迎える。

「お疲れ様、兄さん。どうだった?」
「駄目だ、駄目。今日もあんまり、いい女はいなかったわ。」
「違うだろう!バルザックだよ。(かたき)のバルザック!」
「あー、そうだったな。残念だが、あの野郎もいなかったぜ。」
「そうか……。」

 劇場の持ち主でもある、一座の座長が取り成すように声をかける。

「まあまあ、ミネアくん。そんなにがっかりしないで。焦らなくても、旅を続けていれば、きっと。いつか、見つかるさ。」
「座長さん……。」
「そうそう、マーニャ。これは、今日までのお手当て。ご苦労だったね。」
「わりいな、座長。急に来て、割り込ませてもらっちまって。」
「いやいや、助かったよ。今まで寄り付かなかった女性客が増えて、かなり売上が伸びたからね。」
「女ばっかだもんな、この一座。」
「男はなかなか、ものにならなくてな。女なら多少(つたな)くても、若さと色気で客を呼べるが。歌わせろと売り込んでくる男もいるが、ひどいもんでな。」
「あー、あいつな。あれはちょっと、無いわな。」
「その点、マーニャは芸もあるし、人気もある。私としては、もうしばらくいて欲しかったのだが。」
「買ってくれるのは、ありがたいんだがねえ」
「そうだな、仇討ちを止めるわけにもいくまい。今日はゆっくり休んで、明日の朝出ればいいだろう。気を付けて行くんだよ。」
「おお、そうさせて貰うわ。達者でな、座長。」
「座長さん。何から何まで、ありがとうございます。」


 楽屋を出た兄弟を、一座の踊り娘たちが取り囲む。

「マーニャ様!行かないでください!」
「うるせえな。こっちにも都合ってもんがあんだよ」
「ミネア様!淋しいです!」
「お気持ちはありがたいですが、行かねばならないのです。聞き分けてください」
「マーニャ様ー!やだやだー!」

 縋り付く踊り娘たちを振り払いなだめすかし、一座の宿舎へと続く通路に出る。


 出待ちの女性たちが一斉に声を上げる。

「マーニャ様ー!」
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