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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一〜四章
三章 トルネコおばさん
3-01夢見る主婦

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 レイクナバの町の主婦、トルネコの朝は、夫の声で始まる。

「トルネコ。いい加減に起きたらどうだい。早くお店に行かないと、親方に叱られてしまうんだ。おい、トルネコったら。」
「……はっ。あら、やだ。あたしったら、また寝坊しちゃったのね。」
「やっと起きたね。おはよう、トルネコ。はい、これ。お弁当。」
「おはよう、あなた。また、あたしたちの分まで。いつもごめんね、ありがとう。」
「いいんだ、好きでやってるんだから。じゃあ、行ってくるね。」
「行ってらっしゃい、あなた。気を付けてね。」


 トルネコの夫ネネは、武器屋の親方に雇われて店員をしている。
 大層な()()きで、良い品を安く買っては、必要とする相手に高く売る。
 そのくせ、きめ細かい接客で、ひいきの客を多く持つと評判である。
 トルネコとは職場結婚で、トルネコも人並みに目利きはできる。
 しかし、接客の腕は夫ほどではなく、息子の出産を機に家庭に入った。

 だから、家のことくらいは自分がやろうと思うのだが。
 夫は家事もよくこなし、また好きであるためか、トルネコが手を出す前に、てきぱきとなんでも片づけてしまう。
 本当によくできた夫で、正直なぜ自分を選んでくれたのかわからない。

 そんな夫の唯一の弱みと言えるのが、体力の無さであった。
 普段の生活や仕事に差し支えるようなものではないが、旅をして、大量の仕入れを行うようなことは難しい。
 これが、優秀な夫が、未だに雇われの身に甘んじている理由であった。

 しかし、体力といえば、トルネコの自信のあるところでもある。
 こんな役立たずの自分と結婚してくれたからには、自分が仕入れを担当し、夫が売る。
 そんな自分たちの店を持つことが、目下(もっか)のところのトルネコの夢だった。


 そのために、まずは先立つものがいる。
 儲け話に日々耳を澄ましていたトルネコは、ボンモールのお城で防具を高く買い取っているという情報を手に入れた。
 ご近所の親しく付き合う老人に息子を頼み、独身時代から貯め込んだへそくりをはたいて防具を買い込み、仕舞いこんであった仕入れ時用の武器防具を身に着けて――体型が影響しないものであったのが幸いだった――ボンモールへと繰り出した。

 道中は、狐が化かすという森を避け、平原を通る。
 出会う魔物には覚束ない足取りで、力任せに武器を叩きつけ、問題なく打ち倒す。
 武器職人や戦士が見れば、眉をひそめそうな戦いぶりではあるが、勝てば良い。
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