彼女は盾に転向しました
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みんなに合わせて走るのもギリギリだし『もっと早く走れないのか?』なんて言われてしまう。
「サチ、移動する時は盾をメニューに入れてても良いよ、戦闘が始まって盾を取り出すまでは俺が前に出るからさ」
「でも……それじゃキリトに迷惑が…………」
「大丈夫、少しくらい前に出る時間が増えたって、どうって事ないよ」
「…………うん」
…………やっぱり盾が重い、キリトとのスイッチも出遅れる事が多くなったし、
片手剣は今までよりもっと奥に踏み込まないと攻撃が届かない。槍の間合いよりも深く切り込むのが怖い。
でもそれだけじゃない、特に怖いのが盾を構えて敵の攻撃を受ける時だ。
槍装備なら簡単に避けられるのに、攻撃を受け止めて敵の隙を作る時が一番怖い。
麻痺槍を装備してた時、テツオは盾を使わず私の後ろで敵が麻痺するまで隠れていた。
今だってそうだ。私のHPが少なくなるギリギリまでテツオは私やキリトの影に隠れてる。
テツオのHPはとっくに回復を終えているのに、キリトに言われるまで前に出ようとしない。
――――――でも、私はそれに対して強く言えない。
私ははじまりの街から出たくなかった。
でも、みんなと離れて独りになるのがもっと怖かった。
きっと私は独りになると生きて行けないから。
宿代も無くなって、弱いまま外に出てモンスターに殺されるのは簡単に想像できた。
みんながいなくなったら私は死んでしまう。
私はみんなに付いていく事にした。
戦闘では槍を持たされたけど、みんなの影に隠れた、死にたくなかった。
そんな私をみんなは守ってくれた。
大丈夫だよ、怖がりだなって、笑いながら許してくれた。
…………今でも戦うのが怖い。
何時からだろう? 私はみんなの前に一人立たされて戦っていた。
何度も怖いって言っても。
『大丈夫だよ』『怖がりだな』って、私一人を前に出し続けた。
何時からだろう? 何時から――――本当はわかってる。
あの時、あの人から槍を受け取ったあの時から、みんな変わってしまった。
何度も槍を捨ててしまおうと思った。
でも、それは私の我がままなんだ。私がもっと戦えていたら、こんな事考えずに済んだ。
私がもっと強かったら、弱い私を恨む事なんてしなかった。
誰かのせいにする事も無かった。
――――――全部、私がいけないんだ。
………………
…………
……
俺が月夜の黒猫団に入ってから一ヶ月が過ぎていた。
サチの片手剣転向は相変わらずで、まだ時間が掛かりそうだ。
アスナ達からお誘いがあると、サチは開放されて身が軽くなったかのように
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