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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、投擲する
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のプレイヤー達のことを考えての行動だったということに。

───あんたは立派だよ、ディアベル。俺なんかよりずっと……。

故に、キリトは彼を責めることができない。
このデスゲームが始まったあの日、初めての友人を───クラインを見捨てた自分には、彼の行動を批判する資格はないのだから。

「ディアベル、もう謝らなくていい。今はそんなことより、ボスを倒すことが最優先だ……そうだろ?」
「……、ああ、そうだな……」
居た堪れなくなったキリトは、話題の矛先を目の前のボスに向けることにより、これ以上気まずい空気になることを回避した。
ディアベルも彼の心情を察したのか、それ以上何も言わずにボスへと───ボスと戦う二人へと、視線を向ける。

「《投刃》か……。相変わらず、凄まじいな」
「……ああ」
ディアベルがポツリと漏らした呟きに、キリトも同意する。
四本同時投擲によって威力を底上げしているとはいえ、ユノの攻撃には突出した破壊力があるわけでも、何らかの特殊効果があるわけでもない。
にも関わらず、的確かつ絶妙なタイミングで敵の弱点部位へと投刃を突き立て、例え相手がボスであっても手玉に取る程の精密な援護射撃。
その独特の戦闘スタイル故にいくらか欠点はあるものの、彼がいるのといないのとでは、前衛にとって戦いやすさに雲泥の差があるといっていいだろう。

しかし、それでも。
お互いに《投刃のユノ》を知る元ベータテスターであるからこそ、それに限りがあることもまた分かっている。

「だけど、いつまでもこのまま行けるってわけじゃない。ユノの武器が投剣である以上、数には限りがあるはずだ。だから───」
「私たちで援護しないとね」
「そう、俺達で援護……って、アスナ!?」
いつの間にか傍にきていたらしいアスナに二の句を奪われ、キリトは一拍遅れて驚きを表した。
ディアベルのHPが回復したのを見届け次第、彼女には『後方に留まり、前線が決壊したら即座に離脱しろ』と指示するつもりでいたからだ。
いかに神速の《リニアー》を得意技とするアスナでも、ボスとの戦いとなれば話は別だ。死の危険性だって雑魚モンスターの比にならない。
アスナの剣の才能に魅せられたキリトとしては、こんなところで彼女ほどの逸材を失ってしまいたくはなかった。

「アスナ、君は───」
「私も行く。パーティメンバーだから」
君は安全なところに行ってくれ、とキリトが言葉にする前に。
アスナはフードつきのケープを身体から引き剥がし、愛剣であるレイピアを構えてきっぱりと言い放つ。

「………」
「何?」
「あ、ああいや、何でもない!」
「……?まあいいわ」
今までフードで隠れされていた栗色のロングヘアが露になり、その端正な顔立ちも相まって、キリトは説得することも忘れて
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