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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、投擲する
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……しかし。当然ながら、そんな一方的な攻防が永遠に続くはずもない。
いくらユノの真骨頂が味方との連携にあるとはいえ、その戦闘スタイルを維持するためにはいくつかの条件があり、逆に欠点も存在する。

───このペースじゃ、そう長くは持たない……!

その一つが、投擲武器であるが故の弾数制限。
一度の投擲で使うナイフの本数が四本ということは、単純計算でも通常の四倍の速さで弾数を消費するということだ。
ユノの投剣は通常では出せない威力を誇っているが、逆にいえば、その分限界が訪れるのは早くなる。
まして相手がボスモンスターともなれば、行動を阻害するために必要な手数も通常の敵より多くなるため、このペースをいつまで維持できるかわからない。

───キリト……!

ナイフの残量を表す数値が見る間に減っていくのを感じながら、ユノは心の中で叫ぶ。
視界の端では彼が青髪の騎士を助け起こし、回復ポーションを飲ませている姿が見えた。


────────────


「すまない、キリトさん。本当に……」
「いや……」
しきりに謝罪の言葉を口にするディアベルに、キリトは何と言葉をかければいいのかわからなかった。

二人がボスを引き付けている間、倒れ伏した騎士の元へと駆け寄り、かろうじて死を免れた彼に回復ポーションを飲ませた。
あと一瞬、遅れていれば。コボルド王が発動させようとしていたスキル───確か《緋扇》という名の三連撃によって、彼のHPは瞬く間にゼロにされていたことだろう。
ユノの咄嗟の判断がなければ、リーダーを失った攻略部隊がどうなっていたかわからない。
危険域の一歩手前まで減少していたディアベルのHPが回復していくのを見ながら、キリトは安堵の溜息をつく。
ギリギリだったとはいえ、何とか助けることができた。取り返しのつかない事態になることだけは避けられた。

……と、そこまではよかったのだが。
目を覚ましたディアベルは、キリトの顔を見るなり何度も謝罪を重ねてきたのだ。

───参ったな……。

ディアベルが謝っているのは恐らく、この局面で油断したことに対してだけではないだろう。
先のキバオウの言葉で、キリト自身も気が付いている。彼に対する妨害工作を仕組んだ張本人が、この青髪の騎士だということに。

───とは言っても、なぁ……。

自分がベータテスト出身であることを隠していたのはお互い様だし、そのことに関して彼を責めるつもりはない。
何より、初めて至近距離で彼の目を見た瞬間、キリトは気付いてしまった。
自分はこのプレイヤーを知っている。顔も名前も違うけれど、あの頃───ベータテスト当時、確かにこのプレイヤーと顔を合わせたことがある、と。
そして、ディアベルが自分に対して妨害工作を仕組んだのは、他
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