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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、投擲する
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べく手にした湾刀───否、野太刀に力を集約させる。
対するユノは投剣スキルの術後硬直を受けているのか、一歩たりとも退く気配を見せない。そんな乱入者の姿が、コボルド王に勝利を確信させる。
頑強な金属鎧で身を固めていたあの騎士ですら、たったニ発の攻撃で死の寸前まで追い込まれた。ましてこの軽装な人間が相手であれば、ただ一度攻撃を当てただけでも屠るには十二分だろう。
先の不意打ちには虚を突かれたが、二度とあんな間違いは起こるまい。そう思いながら、刀身に真紅のライトエフェクトを纏わせていく。

カタナ 重単発居合技《迅雷》

野太刀を腰だめに構え、重心を下に落とす。ひとたび発動すれば雷の如き速度を以って敵を斬り裂く、一撃必殺の奥義。
受けられるものなら受けてみろ、と獰猛な笑みを浮かべ、亜人の王は野太刀を一閃させ───

「───」
「──ッ!?」

ようとした、その瞬間。
フードで顔をすっぽり覆い隠しているはずの乱入者が、ニヤリと笑い返してきた気がした。

「そぉー、れっ!」
「グ、ガアアッ!?」
刹那。側面からの強烈な衝撃がコボルド王を襲い、その巨体が数メートルも吹き飛んだ。
苦悶の表情を浮かべながら自身がいた場所に目を向けると、そこには武骨な両手斧を振り切った姿勢のまま、ふにゃりとした笑顔を浮かべる少女の姿。

「えへへ。やっぱりユノくんは投げナイフのほうが似合ってるよー」
「そりゃどう……もッ!!」
「ガァッ!?」
そして。
中性的な声と共に再び投擲されたナイフが、起き上がりかけたコボルド王の顔面───その爛々と輝く隻眼へと、正確無比に突き刺さる。

「グルラアアアアッ!!」
「まあ、当然こっちに来るよね……シェイリ!」
「まかせてー!」
視界を潰されながらも何とか立ち上がり、邪魔なことこの上ない投剣の使い手を潰そうとする。
しかしそちらに気を取られた瞬間、術後硬直から立ち直った両手斧使いの少女が背後から強烈な一撃を叩き込む。
ならばと先に目の前の敵を叩き斬ろうとすれば、横合いから飛来したナイフによって野太刀を振り上げた腕を抉られ、攻撃が中断される。

決して自身は前に出ず、四本同時の投剣による、敵の行動妨害を主とした後方支援。
それこそが、かつて《仲間殺し》と呼ばれたプレイヤー───《投刃のユノ》の真骨頂だ。

「ソードスキルは、使わせない!!」
「ユノくんユノくん!ボスってすっごく斬り応えあるね〜!」
投剣を潰そうとすれば斧が、斧を潰そうとすれば投剣が。
絶妙なタイミングでお互いをカバーし合う連携攻撃によって、まともに身動きを取ることすらもままならない。

カタナスキルによって意表を突き、戦いを優位に進めていたはずの亜人の王は、たった二人を相手に手も足も出ずにいた。



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