投刃と少女
とあるβテスター、投擲する
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ソードスキル発動条件は、端的に言えば三つの要素によって成り立っている。
『使用する技の初動《ファーストモーション》を起こすこと』『使用するソードスキルに対し、同種の武器スキルをセットしていること』『それに見合った武器を手に持っていること』。
以上の条件を満たした際、システムによるモーション・アシストが入り、自動でソードスキルを放つ。武器を装備して初動だけ自分で行えば、後はシステムが勝手に身体を動かしてくれるといった具合だ。
ここで鍵となるのは、三つ目の要素───使用するソードスキルに見合った武器を手に持っている、という条件。
通常のMMOでは『装備していない物』を武器として扱うことはできないが、SAOではそのあたりの条件は意外と緩かったりする。
例えば、『食事用のナイフで細剣スキルを発動する』『フィールドに落ちていた小石で投剣スキルを放つ』といったように。
オブジェクトとして存在する『発動条件に見合った武器』として認識されるものであれば、例え装備している物でなくともソードスキルを発動させることができるのだ。
ユノはその仕組みを利用し、指の間にそれぞれ挟んだ四本のナイフを“ひとつの武器”としてシステムに認識させることにより、投剣の威力を底上げしている。
「ふッ!!」
短い気合と共に最初に利き手、一拍遅れて残るもう片方の手を振るう。
左右でそれぞれ一本ずつを投擲する通常の《ダブルニードル》とは違い、ユノが使用するナイフの数は一投で四本───計八本の同時投擲。
鮮やかなライトエフェクトを纏いながら投擲された八本のナイフは、初手と同じ軌道を描きながら一直線に敵へと───青髪の騎士に止めを刺すべく身体を浮かせた敵の、無防備な腹部へと向かう。
システムのアシストと、ユノ自身の動作による運動命令。更に敏捷値補正によってブーストされた、尋常ならざる速度を以って投擲された刃がコボルド王の腹部に突き立った。
「ガアアアアッ!!」
12本のナイフが無防備な横腹に連続で着弾し、コボルド王が苦しげな雄叫びを上げた。
青髪の騎士に止めを刺すべく発動させようとしていたソードスキルが中断され、その原因を作った乱入者へと視線を移す。
布製の衣服の上に皮の胸当てを装備し、上からフード付きのマントを羽織った軽装備の人間。投擲に使うためか、腰のホルスターには幾本ものナイフが吊り下げられている。
「グルゥ……!」
亜人の王はそんなユノの姿を確認すると、犬にも似た大口を広げてニヤリと笑う。
SAOの敵AIに感情があるのかどうかは定かではないが、仮にあるとすればこう思っていることだろう。
『そんな軽装で自分の前に出るなど、無謀以外の何ものでもない』、と。
「グルアアアア───ッ!!」
青髪の騎士から無謀な乱入者へと標的を移し、一撃必殺を狙う
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