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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、投擲する
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意としていたプレイヤー。
このデスゲームが開始されてから二週間ほど経ったある日、ディアベルは偶々キリトの姿を見かけ、当時の記憶を思い起こすと同時に彼を恐れた。ディアベルのシナリオでは、ボスのLAを獲得するのは攻略部隊の指導者たる自分でなければならなかったからだ。
LAボーナスを得ることによって与えられる、世界に二つとないユニークアイテム。これを自ら入手し、大幅に戦闘力《生存力》を上げることに成功すれば。先頭に立つ者がより強い力を持つことにより、ボス攻略における部隊の士気は格段に向上する。
そんな彼のシナリオを壊しかねない人物の姿を見た時から、ディアベルは密かに決意する。例えどんな手段を使ってでも、ボスのLAを譲るわけにはいかないと。

元ベータテスターに対して異様なまでの憎しみを見せるキバオウに交換条件を求め、キリトの持つ『アニールブレード+6』の買い取り依頼をさせる代わりに、公的な場で鬱憤を晴らす機会を与えた。
先の攻略会議で、キバオウがベータテスターを炙り出そうとした一幕。あれは彼への報酬代わりだったのだが、エギルというプレイヤーの理論立った割り込みによって失敗してしまった。
故にディアベルは、この戦いが終わった後、反省会と称して同じ話題を議論するつもりでいた。
そして、叶う事ならば。新規参加者も元テスターも関係なく、皆で協力して攻略へ臨む体制を築きたかった。

───後は頼む、キリトさん。ボスを、

倒してくれ、と、声に出さずに呟く。
彼に対して裏で妨害工作まで仕組んだ自分がこんなことを言っても、今更虫が良すぎると思われるかもしれない。
だが、それでも。死の間際、ディアベルは彼に縋らずにはいられなかった。

───頼む、キリトさん。ボスを、倒してくれ。みんなのために───


その時、一筋の光が彼の視界へと飛び込んだ。


────────────


「間に、合えぇぇぇッ!!」

自身が《投刃》と呼ばれていたオレンジ《犯罪者》プレイヤーであることの証───腰のホルスターから投擲用ナイフを“四本同時に”抜き放ち、ユノはあらん限りの声で叫んだ。
初手はあえてソードスキルを発動させず、システムのモーション・アシストに頼らない四本同時の一投。
それが敵に向かうのを確認するよりも早く、すかさずマントの下に両の手を潜らせ、左右に四本ずつ───計八本のナイフを構える。

投剣 ニ連続投擲技《ダブルニードル》

両の手でそれぞれ一本ずつ、二本の投擲用武器を連続で投げるというごくシンプルな技だ。
投剣スキルの中では《シングルシュート》の次に習得できるこの技は、投剣スキルを多少上げている者にとっては別段珍しいものではない。
……が、ユノの場合に限っては他プレイヤーのそれとは違う。

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