参ノ巻
文櫃
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文なんてとりつけちゃうのよ!」
「だがのぅ・・・おまえももう十六。そのように悠長に待っていて、その気の強さと見るからに村娘のような態度で貰い手も見つからず尼になるしか手がなくなってからでは遅いしのう。その点、高彬殿ならおまえのその性格もよく知っておるし、側室がいても粗末には扱うまいよ」
「あのねぇ。なんっっっでみんなが十三や十四でホイホイ嫁ぐからってあたしもしなきゃなんないのよ!」
あたしは感情の赴くまま、ばんっと畳に手を叩き付けた。
「あーそーでした。父上、これっ」
あたしは父上に持ってきていた黒ずんでしまっている文櫃を投げるようにして押しつけた。
「なんじゃ、これ・・・は・・・」
「知らないわよ。前田の焼け跡で見つけたの。火のせいか、燃えちゃってくっついて開けられないし。でもこんな鉄の文櫃そうそうないから、大事なものかと思って持ってきたんだけど。父上が知らないとなったら兄上の・・・ち、父上!?」
あたしは何気なく父上に目を移してぎょっとした。父上の顔色が、青と赤の斑になりだくだくと顔中尋常じゃない汗をかいていたからだった。大きく開かれた眼は、渡した文櫃を穴が空くほどに見詰めている。
「え、なにその顔。病気?どうしたの父上?」
「瑠螺蔚やあっ!」
父上はものすごい勢いであたしの両肩に飛びかかってきた。
なっ、なっ、なに?
「こっ、これ、これ、これを・・・読んだか!?」
「え、中の書を?だから、開かなくて、読んでないって・・・」
唾を飛ばしながら至近距離で捲し立てる父上の顔を押しのけながらあたしは言った。
「というか高彬!父上にドン引きしてないで助けなさいよ!」
「た、忠宗どの・・・」
しかし父上はあたしも高彬もものともせずひとりで盛り上がる。
「読んでない!?よし、読んでないんだな!それは行幸。瑠螺蔚、おまえ十六で間違いは、ないな!?まだ遅くはない、が時がない!」
父上は、両横の畳をターンと叩いた。それと同時にばらばらばらっと音もなく表れる筋肉隆々集団。ひい、ふう、みい・・・五人もいる。
な、な、な、な・・・?
高彬があたしの腕を引き、わけもわからずあたしは高彬の半身に庇われる。とはいえ高彬も何が何だかわかってはいないに違いない。
「忠宗殿!?これは・・・」
「いやはや、儂としたことがすっかりうっかり忘れておった・・・」
父上は筋肉集団を後ろに従え顔の汗を拭う
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